円高はもう止めた

副大臣の発言で、為替相場はひとつの堰が切れた。その流れは、いつのまにか濁流となる。

七十路は夢も淡しや宝船 秋桜子。

宝船とは、新年の季語である。

もう一月も終わろうというのに、今時分に詠むような句ではない。

旧正月も、先の話。

だが、最近荷を積み直した宝船は、きっと来年以降の初夢で出てくる。

勢い止まらぬ円安の流れ。三六〇円時代から走り続けたドル円航海は、潮目が変わった。

かれこれ、四十年以上は円高時代であったか。

相場には、周期というものがある。

どのような相場も、上げ続けたり、下げ続けたりすることはない。

どこかで天井をつけると、底を打つまで下がるのが相場である。

逆もまた、真なり。これぞ天地自然の摂理。

円高はもう止めたと、相場の神様が仰る。

次は、円安だとも。

金も上がる。1980年の狂乱物価時代。東京市場だけが、あの時の高値をとっていない。

確か当時の小売価格の高値は6,490円であったと記憶している。

この価格は、いずれ円安で取りにいく水準だ。

そのうち、日本の財政が危くなる。金利は上昇、円の価値も下がる。

ならば金でも買っておこう、となるのも天地自然の摂理といえよう。

東京金のチャートは、形が良い。十六カ月ぶりに高値を更新した。

買ったままで、ジッとしておけば良い。

そのうち、一般紙の紙面に「金価格、国内史上最高値」という見出しが躍り出る。

田中貴金属にも、また長い行列が出来る。

宝船が、荷卸しを始めるのはその頃か。