昭和の風林史(昭和四六年七月二日掲載分)

人生意気に感 功名誰か復た論

去年は桑乾の源に戦い今年は葱河の道に戦う。兵を洗う一万七千円。馬を放つ烽火燃ゆる中に。

「古渡りの切子玲瓏そのものに 月斗」

七月新ポは雨である。予報では梅雨明けは遅れるだろうという。数日来の天気はもう真夏の空の色をしていた。例年になく梅雨明けが早いのではないかと思っていたが、そうではないらしい。

西は干ばつ北は冷夏型であると気象台は繰り返し言う。北海道の一カ月予報も七月上旬、北部を中心にかなり低温。中旬は平均気温低し。下旬は月末に寒気がはいって不順―という。

七月十七日、京都は祇園祭。そして二十日は土用の入り。小豆作柄も土用の天候によって左右される。予報を信ずる限り七月一杯不順な気候であるから作柄におよぼす影響は、はかりしれない。

ひとたび人気めぐりくれば、ひと場で様相急変し、人気殺到火柱高と書いた通りの動きとな った。

月末の十一月限の下放れ星、これを〝捨て子〟と見て奔然新ポから〔六千円→六千二百円〕の充分固めた圏内にいとも軽く食い込み、爆走のかまえである。

さあこうなってくるとまた売り方は動揺する。

新規買いと踏みとによって弾みのついた相場は、充分休養をとっているだけに勢いにまかせて暴走するだろう。

各穀取とも市場対策は万全である。銃も砲も充分手入れが出来ている。軍旗はためき軍馬いななき突撃ラッパは鳴りわたる。
こうこなくては面白くない。白刃をかざし目先の目標一万六千八百円から一万七千三百円。

支援材料は相場がつくるはずである。

場面は変わった。堂々大転換である。

すでに強弱の段階ではなかろう。

水声は激々たり

蒲葦は冥々たり

梟騎は戦闘して死し

駑馬は徘徊して鳴く

朝に行き出でて攻め

暮れて夜に帰らず

付けた値が相場である。買った値がコストである。値ごろを問わず。

悠々たるわが心

ただ君がための故に

沈吟して今に至れり

我によき賓有らば

瑟を鼓し笙を吹かん

明々たること月の如し

山は高きを厭わず

海は深きを厭わず

周公は哺を吐きて

天下は心を帰せり

誰が強弱を論ぜん。いざ征かん。相場熱狂し市場割れんが如し。

●編集部注

当時の風林火山は電光石火の如く強弱が日替わり、読者も戸惑った事であろうが、その切れ味は冴えていたと言えようか。
この年の小豆相場は近藤紡が10数年ぶりの介入に湧き、近藤紡売り、山梨買いの大仕手戦が繰り広げられ、その攻防戦はまさにドラマである。その数年後には小豆相場は当時の史上最高値へと展開されていくが小豆相場華やかなりし時代を懐かしむ。
【昭和四六年七月一日小豆十一月限三五〇円高】