昭和の風林史(昭和四六年七月八日掲載分)

緊迫した場面 急騰急落世の常

反騰、反発、高ければ売り。相場の下値はかなり深いと判断する。しかし大天井は打っていない。

「日盛りに蝶のふれ合ふ音すなり 青々」

三百円棒は三尊。

節足各限のそれは頭揃いの毛抜き型で日足の姿はダンゴ天井ゆきもだえ。場面は、まだ天候相場の序の口であるが、相場としては大台五ツ変わりの大相場が〝思惑の冷却時代〟にはいっている。

しかしまだ、大天井すなわち三番天井は打っていない。

だから、スケールの大きな考えかたをする投機家なら五百円幅のナンピン買い下がり方針で八月、九月の天候に挑戦する方法もある。

水準が高所にあるだけに売ってよし、買ってよしである。

現象としては=高値掴みの格好。

売り玉は随分安いところにあって苦しい辛抱が続いてきた。売り方久々で、にっこり笑う。

さて、当分は買い方の辛抱、苦難期である。ただし、この辛抱には楽しみがある。長期予報にあるが如く七月中、下旬に低温が実現すれば、ストップ高で六千円台を取り返してしまうであろうから。

旧穀の高値買い玉はどうしたら良いか。戻したり、勢いよく反発したところで逃げておくことだ。

強力な仕手的買い方が出現しない限り、よほど天候不順→作柄悪化以外、もうあの高値は買い切ったとしても、それ以上の相場は無理である。

投機行為の最も緊迫した場面である。

筆者は弱気になったのではない。が、先限一万四千円割れ→最終一万三千二百円の相場と見ている。

一万四千五百円割れから目先狙いで買い下がれば、途中の反騰は取れよう。しかし深追いせず、あとは戻り売りで一万四千円割れを狙うべきだ。一万四千円以下は強烈買い下がり方針。この反騰は壮烈なものとなる。すなわち底入れ→大出直り三段上げコースだ。

まるでこれからの相場は抜き身のだんびらをふり回すが如き修羅場であろう。気がつかぬうちに首っ玉の二ツ三ツが素っ飛んで足元に転がっているだろう。

目先の一高一低を無視せよ。

あけひろげた広い座敷の真ん中に日本刀を突きさして、反騰反発戻り売り。高かったら売る。急落、暴落アッという安さは買う。寄らば斬れ。

暴落あれば必ずその反動で反発がある。

汗が吹き出る。太陽はギラギラ。相場は必死の形相。取るも取られるも斬るも斬られるも運次第。

●編集部注
この頃の風林の相場観は冴え渡っている。まさに翌日の小豆相場は「抜き身のだんびらをふり回すが如き修羅場」となる。

「気がつかぬうちに首っ玉の二ツ三ツが素っ飛んで足元に転がっているだろう」。実際その通りの展開となるのだが、「反騰反発戻り売り。高かったら売る。急落、暴落アッという安さは買う。寄らば斬れ」―簡潔明快。

まるで未来を見てきたかの如く!

今の小豆相場はどうだろうか。アッという下げが入れば、まさに四二年前の相場だが、出来高数百枚の世界じゃ盛り上がらない。

東京金は6月末安値からV字のスパイクボトム。今の押し目を完了すれば二段上げで四二五〇円前後を狙いたい。

【昭和四六年七月七日小豆十二月限大阪二八〇円安/東京一六〇円安】