昭和の風林史(昭和四六年七月九日掲載分)

戻りは売り場K紡介入に沸く

目先の小戻し、反発は売り場だ。近藤紡の大量売りに沸く市場だが、今は戻り売りの型である。

天候相場も佳境入りだ。ギラギラ照りつける太陽で売られ、肌寒いといっては買われる。

一夜明ければ、前日の地合いも、その形跡さえとどめていない。照った曇ったの強弱は七月、八月、そして九月とまだまだ先が長い。

このとき、市場は十数年ぶりとかいう近藤紡の介入に沸いている。

伝えられるところでは増山氏も再び買い出動ということだ。

近藤紡の十月限の猛烈な売り。一歩も退かない山梨買い。各地市場では大小の思惑筋が入り乱れて、いつ果てるともしれない。

舞台装置よし、役者も一流。

規制でがんじがらめに縛られた人絹糸の〝気違い芝居〟もひとまずその幕を閉じた。

観客は再び穀物劇場に押し寄せてくる。「大入り満員」は疑う余地がない。そして脚本は天気次第でどうにでも変わる。

相場は五千円の関門を目の前にして、攻防にも熱がこもってきた。面白くなるのはこれからである。

ダンゴ天井構成とみて、反発しようが戻そうが委細構わず売っていくか、それとも超スケールの相場には超スケールの感覚で五百円刻みで買い下がり、三段上げをモノにするか。
近藤紡の売り玉(十月限)は確実に千枚〔もちろん提灯もついている〕を突破、ケタ外れの資金力を持つ同仕手のこと、玉は目に見えて膨らむことであろう。

まさに火事と喧嘩は…である。

さて相場の方針だが目先の戻り反発は売りでよい。高値圏で買い玉はシコッている。

この高値買いを一度投げさせる場面は、やはり五千円台割れからであろう。

千丁替え程度では、このごろの投機家はビクともしない。

大仕手の介入は今後の動きに変化をもたらすのものだが、基本路線には変わりはない。

三百円、五百円の変動にそのつど動揺しているようでは最初から天候相場を張る資格はない―とおとなしく身を退くのがよい。

三、五百円戻しは絶好の売り場と判断する。

●編集部注 【当時の時代背景や筆者の意図を尊重し、原文のまま掲載させていただきました。】

さて八日後場三節で一気に崩れた小豆相場、近藤坊十月限売り崩しにこの日の高値から安値まで六八〇円安、買い方山梨、増山氏。天候悪化を疑わない信念の買い。役者勢ぞろいで、価格変動にそのつど動揺しているようでは最初から天候相場を張る資格はないとまで言い切る風林節。ここからは相場師の胆力が試されよう。目先弱気、大勢強気の風林はこの後、大手仕手参入で相場観がどう変わってくるか見物である。

【昭和四六年七月八日小豆十二月限大阪五一〇円安/東京六七〇円安】