押し目は買い 先行き波乱万丈
急ピッチな反騰だけにひと息入れる押し目もはいろうが、安いところは積極買いでよい。
「すはすはと夜は明易し麻畠 暁台」
近藤紡の売った水準まで小豆十月限は反騰してしまった。近藤紡は(十月限を)六千六百円でもうあと千枚売るつもりらしい。
買いのほうは建て玉制限にからんで、山梨と丸五商事との間に感情のもつれが表面化し、山梨―丸五の過去五年間の取り引きも最終局面に達した模様である。
一方、山大商事の杉山社長は帰国後再び強力な強気方針を打ち出し、山梨を全面的に援護する布陣。
ここに相場市場は盛夏を迎え、いよいよ熱気充満である。産地からの情報は平年作を伝え、週明け20日は土用太郎。売り方は土用の好天を背景にして一気に売り崩さんとするも買い方腰を落としてガップリ立ち向かう態勢。
さて、東京市場をまわって感じたことは、①安値を売りこんだ②高値に買い玉あり③一般人気は戻り売り傾向④売り方、買い方両仕手筋は一歩も引かない構え。
この相場どうなるか現在予測できることは高値更新すれば一気に噴き上げて大天井値をつけてしまうであろうし、ここで再び崩れるようなことになれば、買い方猛然と立ち向かうであろう。
山大の杉山元帥は『旧穀は一万五千五百円の一万六千五百円。この圏内の動きであろう。新穀は一万三千五百円の一万五千円圏内の相場と見ている。仮りに天候がよくて作況をほめて売っても新穀の一万三千五百円は大底である。安ければ買い一貫で対処する』―と。
天候相場プラス仕手相場=大波乱。高いところは買い方もやれやれで手仕舞いしてこようし、近藤紡も新規に売ってくるだろう。
しかし押し目は陣型を立て直した買い方の積極買いがはいるはずだ。
要は土用の天候である。それと伏兵的存在の病虫害の発生であろう。これだけ大きく取り組んだ相場だ、ただごとでは終わるまい。
目先、押し目構成と見るが、急落したところは買いでよい。
きょう京都は祇園祭“ゆくもまたかへるも祇園囃子の中”
●編集部注
祇園祭である。
まるまる一カ月かけて行われるこのお祭りは、屏風祭りとも、ハモ祭りとも呼ばれている。
文末に幾許の雅さでも足してはみたものの、恐らく当時の風林翁、雅も美食もへったくれもなかったのではないか。
信念を持って、甲斐の軍旗を掲げ、思惑通りに値が動いた今こそが、相場で一番モゾモゾする時間帯といってよい。
この時の小豆相場は、悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つその中間、やや懐疑寄りのところ。
信念なき小人物は、こういうところでビビる。
すぐ買いを利食いして、あろう事かドテン売りに手を出す。私自身、何度そんな経験をしたか。
風林翁、自身を鼓舞するが如く、これを書いているように見えた。
【昭和四六年七月十六日小豆十二月限大阪一一〇円安/東京八〇円安】