昭和の風林史(昭和四六年七月一九日掲載分)

先二本猛反撃 六千円奪回作戦

買い方は一難去ったところであるが、まだ楽ではない。売り方もこれから苦しいところだ。

「日向水ひるごろ雲をうつしけり 万太郎」

証拠金の関係もあって、また建て玉制限などから小豆の期近限月二本(七・八月)は敬遠されている。商い面は事実上、新穀二本(十一月・十二月)に集中し今後も旧穀は、あらたな事態が発生しない限り解け商いの方向に進むだろう。

あらたな事態とは近藤紡が新規に大量の売り建てをするとか、あるいは売り玉を手仕舞てくるとか―の取り組み内部要因面の変化である。

新穀限月はあくまで天候と作柄次第で、今週はいよいよ成育段階における最高の山場を迎えるわけだ。

産地からの情報では平年作まで回復とも言うし必ずしもよくないし、病虫害の発生も目立つと伝える。天候は低温気味。日照不足が心配されている。

先限は、下げ幅の半値を戻した。

十一月限も半値戻しである。

仕手関係では十月限は近藤紡の売り値水準まで回復して、これで売り方・買い方五分と五分の出発点に戻ったが、無い物を売っている近藤紡のハンディは大きい。しかし買い方も高値で腹一杯買ったあとの叩き込みを買い支えて、あとは天候次第で運を天にまかせる格好。

さて十一限の六千二、三百円どころは大層な因果玉がある。天の理が買い方に味方して六千三百円を一気に買い切る場面があれば噴き抜けで様相急変。大変な相場となるが、力で買い上げて六千二、三百円でもたつくようだと再度の反落は、まぬがれない。

売り方も苦しいところだが、買い方も非常につらいところである。

しばらくは高値圏での逆張り相場と見ることもできようし、押し目待ちの強気方針でもよい。

人気面は方針を決めかねているところである。有力買い方は、腹一杯買ってどたん場まで叩き込まれたあとの反騰で、一難は去ったが、大々的な攻撃に踏み切るほどの力がまだ出来ていない。天はどちらに味方するのであろうか。

●編集部注
小豆の買い相場は、懐疑の中をすくすくと育っているようだ。
元々、3カ月前は12000円をうろちょろとしていた相場。売り方は4000円を崩そうと踏ん張るし、甲斐の軍旗は6000円のその先へと向っている。
その光景あたかもドラクロアの描きし『民衆を導く自由の女神』の如し。 
運を司るのも、女神様らしい。運否天賦で相場は勝てないのだが…。

【昭和四六年七月十七日小豆十二月限大阪四四〇円高/東京三九〇円高】