昭和の風林史(昭和四六年七月二十六日掲載分)

遂に崩落開始 今週はガタガタ

先週は、かろうじて値を維持した。今週はガタガタになりそうだ。崩れだしたら千円安だ。

「青柿の落ちしより早かびそめし 虚子」

下げようとする相場。これは相場自身の重さで下げようとする。いうなら自然の姿である。

それを、下げさせないよう支えたり、買い煽ったりする。これまた当然であろう。産地の天候が土用にはいって、さっぱりよくない。買い方は高いところでも腹一杯買って、信念の強気である。ここで安ければ当然信念を燃やして買うわけである。

どうだろう。週末の下げ味は非常に悪かった。そして、ここにきて東京市場は三晶が盛んに売ってくる。中共小豆の成約も進みだして、そのつなぎ玉と見ることもできる。

十月限一代の日足線は頭で三ツ揃って、この限月が六千円を割り込んでくれば、恐らくガタガタになるだろう。

十一月限の六千円~六千三百円。このダンゴになっているシコリ玉が、なんとしてもほぐれない。

しかも、ここにきて十一月限、十二月限がまたまたダンゴになって、まさにふれなば崩れんという風情である。

産地天候が、あれだけ悪かったにもかかわらず人気がつかなかったことはすでにこの相場が老境に入り、随分疲労していることを証明しよう。

相場は、かなりのところまで不作を織り込んでいるし、のみならず規制(大幅増証と建て玉制限)に嫌気がさしている。

それにしても中共小豆がホンコン経由を含めて千㌧弱も成約されたことは気分的にも大きな圧迫材料である。

輸入小豆は旧穀限月の頭を押え足を引っ張る。今週から予想される天候の回復は、市場人気をして先二本に売り物集中して、買い玉の投げと新規売りで先限五千円割れ、四千円近辺までの崩しを実現させることであろう。

時に七月25日は大阪天満の天神祭。堂島米相場時代より俗に〝天神天井〟という言葉がある。

前週はせい一杯値を維持したが今週は相場自身が内部崩壊して値崩れを見せそうである。

●編集部注

今様なら〝ktkr〟か。これはネットスラングで「キタコレ」と読む。
少し前、甲斐の軍旗を翻して、ドラクロアの絵のような文章を書いていた人物の筆には思えない。
それにしても三晶とは懐かしい。この記事が出た時には、私はまだ生まれていない。ただ、営業で外回りしていた頃に、この本社ビルの地下へは何度か通った。
旧字体で書かれたロゴが古めかしいビルにかかり、ひたすら威圧感があ った事を覚えている。
その地下に画廊があって、そこが投資家のサロンになっていた。いまはどうなっているのか。
平成も、いささか遠くなりにけり、である。

【昭和四六年七月二四日小豆十二月限大阪七〇円高/東京八〇円高】