昭和の風林史(昭和四六年七月二十三日掲載分)

暴落の兆候!! 音たてて崩れん

大廈(か)のまさに顛(たお)れんとす一木の支うる所に非ず。音をたてて崩れるだろう。

「寂寞と一汁あつし夏料理 普羅」

かなり相場は疲労していると見るべきであろう。

産地天候が少しでも回復すれば暴落ものである。

最も肝心な七月中旬に低温が続いている。小豆の作況は、予想すべくもなく悪いはずである。にもかかわらず相場に勢いがつかない。

考えてみれば旧穀限月前三本の七、八、九月限は、増証と建て玉制限により、これはもう相場ではない。ただ安値に売り玉が残っていて、それのパラパラと踏んでくる玉に買い方が玉を合わせている、すなわち終戦処理段階にすぎない。

閑であること。荒涼寂寞とした相場内容である。

十月限は近藤紡売りの山梨買いという取り組みで、組んだままだから、面白味が欠ける。山梨は天候不順に賭けているし近藤紡は資力に自身を持っていて結局は取引所当局がその間にはいって抜け解け合いということになるのかもしれない。

せめて先二本の新穀限月が熱狂的な動きになれば―と期待するが筆者は、こう思う。

①六千二、三百円どころは腹一杯買っている。その買い玉は、ひとまず逃げたい気持ち。

②七月十日の安値からの反騰は天候不順というバックもあったが、買い方の陽動によるもので、相場的に無理をしてきている。

③六千二、三百円どころから千円引かされるつもりで売り上がってやろうという新しい勢力の伏兵がいる。

④相場はかなりのところまで不作を織り込んでいる。

⑤相場は日柄の面でも疲労している。

⑥高値更新なら、あらためて規制が強化される可能性が濃い。

⑦これだけ不順な天候で作柄も悪いのに人気化してこないところに、この相場の正体が浮きぼりされていると思う。

従って、遠い先に行っては買い場の出る相場と思うけれど、今現在は、この相場を強気するわけにはいかない。

低温、不順を織り込んでいては相場に新鮮味がないわけである。

方針は噴き値売りである。

仮りに十一月限の六千三百六十円を買い切ったとしても上値は怖くない。すでにトウのたっている相場である。高値更新は、まず買い方が、
やれやれで逃げるだろう。

売っておけば少し天候が回復すれば暴落ものである。

判りやすい売り場と見る。

●編集部注

面白くなってきた。

ちょっと前まで、文末で祇園祭に触れていたはんなりさは微塵もない。

やはりアグレッシブな相場になると、文章も俄然面白くなる。この言説がどう変わっていくか、来週もお楽しみに。

【昭和四六年七月二二日小豆十二月限大阪二〇円安/東京一三〇円安】