昭和の風林史(昭和四六年八月三日掲載分)

両陣営対峙し 夏枯れの様相も

買い方は突っ込み買いの陣型。売り方は噴き値売りの態勢。激動するか閑になるかのところ。

「おいてきし子ほどに遠き蝉のあり 汀女」

ある程度のサヤをつけて生まれると予想されていた小豆一月限が逆ザヤで登場した。なんとなく気が抜ける八月新ポであった。

数日来の十一月限の日足線でお気づきの人も多いと思うが、下に寄っては大引けにかけて引っ張りあげる面白い線型が続いている。

肩下がりの引っ張り上げ陽線とでも言うべきか。買い方が、なんとかして相場に刺激をあたえようとするその苦しい心情が、線型に具現していると言えば、買い方は恐らく冗談でしょう苦しいのは売り方だ。作柄がこんなに悪いのにカラ売りがこうも増大しては、下げる相場も下がるまい。なあに一万七千円は時期さえくれば軽く付けるよ―と、言うに決まっとる。

強気は、売り込んでいるとおっしゃる。弱気は買いついていると言う。立場変われば表現の仕方まで変わる。取り組みはふえつつある。十一、十二月限は五千五、七百円中心の大取り組みになった。

それで、いつごろ、どのような材料をキッカケにこの相場がほぐれるだろうか。作柄は非常に悪い。六、七分作であろう。だがそれは織り込み済みだ。

作付け面積の増反は相当のものらしいという。

需給面はどうだろう。在庫は買い主力の手の内に偏在している。その限りでは期近限月の制空権は買い方のものである。しかし買い方は戦線が拡大しすぎている。支えとするのは作況悪である。畠から引き抜いてきた出来の悪い小豆の木を眺め、こんなに悪いのに売る奴は馬鹿だ―と言うだろう。

だが、相場は老衰している。なんとも元気がない。作柄が如何に悪くとも時にして相場は別の動きをする。
凶作に買いなし―と。

左様。売り込んでいるかもしれないが、買いついてもいる。作柄悪は万人承知である。六千円抜けは買い方自身が逃げたい気持ちである。現物が欲しいのではない。上値が欲しいだけである。

買い方が突っ込み買い方針なら、売い方は噴き値売り方針でよい。

●編集部注

ここまでの、東京小豆の日足チャートだけを見ると、6月の月間最高値を頭に、同月の月間最安値と翌7月の月間最安値をネックラインに、三尊天井が間もなく形成されそうな線形に見える。

恐らく1万5000円を巡る攻防戦が繰り広げられていたのであろう。

【昭和四六年八月二日小豆一月限大阪一万五四八〇円/東京一万五三八〇円】