昭和の風林史(昭和四六年八月六日掲載分)

売り姿勢不変 不作百も承知だ

先三本の六千円台は売り方針の姿勢を、さらに強くするところだ。買い方も信念。売り方も信念。

「ひた寄せて遠引く潮も晩夏なる 登四郎」

不作は決定的である―という見通しと、在庫薄を、あらためて認識し、台風19号の進路も懸念されて新穀相場の買い人気場面となった。もちろん売り方の踏みが目立つし、主力買い方の陽動作戦も効果を挙げたが、買い主力は高値に対しては玉をすかし、また三晶などの覆面筋も集中的に売り応じて先三本の六千円大台乗せは久しぶりで市場に熱気を感じさせた。

ところで買い主力の基本的小豆市場における戦略は、およそ次のようである。

①八月限も納会は受けるし、続いて九月、十月も現受けの姿勢を続ける。

②市中現物のほとんどをその掌中におさめる。九月は需要期であるから現物でさばける。

③現時点における新穀は七分作である。先行き病虫害や低温、台風、秋冷などで半作になる可能性もある。

④新穀の一万五千円は八分作でも大底である。また新穀限月が割りを出せば旧穀前三本も当然値上がりするわけで手持ち現物に値下がりの危険はあり得ない。

⑤最終的には新穀の一万八千円相場である。

買い方は信念を持って強気している。

そして湧いたところはほどほどに利食いして、押したところを仕込む。

まさに鳥なき里の蝙蝠という感じがしないでもないが、儲けることはよいことで、損するのが嫌なら強気すべえ―というところ。

売り方にすれば、六千円が七千円でも売り上がれば、凶作に買いなし、必ず崩れる。たとえ新高値に買われようと腕力相場がいつまでも続くはずがない。

筆者は次のように見る。

①強気が急速に増大している。そして下値を一万五千円底という考え方が支配している。だから一万六千円台は逆向かいで売り場になろう。下値も一万四千円割れがある。

②作柄悪は織り込んでいる。買い方の陽動は、シコリをつくる。

③悪材料は、ある日突然出現するものだ。また一俵の現物が無くても崩れる時期がくれば値下がりする。

④相場は信念である。一万六千円台は売り一貫でよい。二千円崩しがある。

作柄の回復する余地は残されている。

●編集部注
相場も後から見れば何とでも言える。しかし、現実から未来の予想となると、ここまで断定的に書けるものではない。ましてや不作は決定的と言われる状況下、ここで弱気を貫く信念には感服させられる。

前日の「急所の売り場」はズバリ。そして信念の売り。ここ数日の風林の相場観は神憑りとしか言いようがない。まるで未来を見てきたかのような書き方。

実際、この時の小豆は前日高値からお盆にかけて続落していくのだ。

【昭和四六年八月五日小豆一月限大阪四〇円安/東京六〇円安】