昭和の風林史(昭和四六年八月十三日掲載分)

将軍突撃せり 軍旗倒れんとす

万里悲秋の風吹き抜けて三軍ことごとく散じ、旌旗まさに倒れんと

す。あゝ将軍突撃せり。

「きりぎりす今日の声切る流人墓 清子」

どちらが無理をしているのだろうか。買い方か?それとも売り方か?そして、どちらが相場に逆らっているのだろうか。

もちろん買い方に言わしめれば言下に『それは売り方だよ』と言うにきまっている。

こんなに作柄が悪く

病虫害の兆候もある

再び天候は崩れるだろうし

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しかも需要最盛期に向かう。

一方、売り方にすれば下げようとする相場を支えたりするのは、相場に逆らっているわけで/高値に買い方の大きなシコリ玉があるから/作柄悪でも天候不順でも相場に勢いというものがつかない。無理しているのは買い方だ。

強気があっての弱気。弱気あっての強気。そのどちらにも信念があり言い分がある。

さて、帯広などの一部で昨年発生した〝立ち枯れ病〟らしいキザシがあると伝えるし、もとより作柄は楽観できるものではない。

本来なら11日の相場など集中豪雨の予報が出ているのだからストップ高してもよいわけだが、引けにかけて値崩れした。いかに相場そのものが、天候や作柄とは関係なく、相場自身の疲れた動きに変わっているかが判然とする。

誇り高く良識ある信念の買い方・山大商事と山梨商事の両者買い玉合計数は七千七百枚に達した。かつてない量である。

まさに〝将軍突撃せり〟の感を深くする。

筆者は思う。杉山元帥の帰国が、もう一週間遅かったら相場は、まったく違った動きになっていただろう―と。確か七月の11日にアメリカから帰って、12日月曜から孤立していた山梨兵団に支援を送り、戦況をまたたく間に立て直した。

さすが杉山元帥、市場ではその鮮やかな作戦に目を見張ったものである。その行動はロンメル元帥にも似ていた。

今ここにきて山大軍団杉山元帥は山梨を上回る兵力の投入である。

〝将軍突撃せり〟。久しく上京していないので元帥に接する機会もないが、その意気たるや勇壮ならんと思う。

だが、相場そのものを見る時、ことごとく衰老し、万里悲秋の風吹き抜け、三軍散じ尽して旌旗まさに倒れんとす。

誇り高き買い方の旌旗は中空を飛ぶ真紅のS・Sの矢である。

これに対する売り方〝どくろ崩し〟の軍旗も風にひらめき堂々の布陣である。

●編集部注
元帥の突撃指令は、吉と出るか、凶と出るか。

相場の流れが極まるとこのような場面がある。今も全く変わらない。

この文章を読んでいてギリシャショックを舞台にした香港映画を思い出

した。ハンセン指数先物取引が最後に登場する。

【昭和四六年八月十二日小豆一月限大阪二〇〇円高/東京一四〇円高】