昭和の風林史(昭和四六年九月十日掲載分)

露團々風蕭々 秋冷いとど早し

刈り取りが早いか、降霜が早いか。これからは一日一日が勝負である。

八月の全国穀取理事長会議で今後の小豆市場対策が協議されたが、まだ収穫予想量がはっきりしないという理由などから結論がでず、十四日の農林省発表を待って改めて二十日に具体策を決めるというだけにとどまった。

目下の市場の空気はきょう小樽で開かれる雑穀懇談会と十四日の農務省発表数字待ちというところである。

そして巷間伝えられる早耳情報によると、雑穀懇談会の収穫予想が百万俵近いとされているのに対し、農林省発表はこれまでの推移からみて七~八十万俵ではないかとされているので、そのひらきが大きすぎる。このため仕掛けづらい環境となっている。

それに、絶えず上値規制懸念が漂っているので利食い先行の傾向にある。

さて、各市場とも随分と取り組みが減った。それはイレ一巡とも見えるし、売り方のイレにあわして買い方が利食いしたとも思える。
現実にこのあたり、一応手をすかせた有力な買い方が、次のチャンスを虎視眈眈と狙っている。

ここ一日一日と秋の気配が濃い。東京や大阪でも夕方の空はすでに完全に秋である。とにかく今年は秋の早いことには誰も異存はないだろう。
おりもおり台風二十五号が去ったあとに、またまたオホーツク海にかなり優勢な高気圧がはりだしてきた。

またモンゴルには一〇二八ミリバールという強い高気圧がゆっくり南東に移動している。

この調子でゆくと南方海上の台風二十六号が通りすぎる来週半ばあたり、かなりの低温、あるいは降霜ということも充分に予想されるところである。
そして、その次は二十三、四日ぐらいが危ないと気象通はいっている。

いずれの場合であっても作柄が大幅に遅れているだけに売り方にとってはなんとも物騒な成り行きである。まさに一触即発だ。

売り方の心情の一部に上値は制限されるだろうというような安易な気持ちがあるとすれば、とんでもない考え違いである。

凶作に悩む北海道の農民の立場からすれば、小豆一俵二万円でも二万二千円でも高くないという理窟も通るわけのもの。

早霜や凍結を望むものではないが、現実の状況からみてここは押し目買いに徹するところ。

来週にかけ一噴き必至の形勢と考える。

●編集部注

〝一噴き必至〟とは、その勘たるや鋭敏なり。

一触即発のやっちゃ場は、まもなく再び阿鼻叫喚の鉄火場へと変容する。

【昭和四六年九月九日小豆二月限大阪二一〇円高/東京一五〇円高】