昭和の風林史(昭和四六年九月二一日掲載分)

大暴落は必至 脳天カチ割れ!!

一万円の手亡なんて使い道がない。単に博打道具だ。必ず大暴落する。叩き売れ。

「女来て墓洗ひ去るまでの鳩 波郷」

小豆市場から投機資金が他商品へ、勢いをなして流出している。そしてまた手亡の相場へも流れている。

手亡相場は一万円台に乗せて開所来の高値になった。

商品価値として一万円の手亡の使い道があるのかどうか疑問であるが、投機の対象、すなわち、今ここでは、博打の道具として、結構通用する。

大手亡豆などという豆は使用しなくても済む豆である。

輸入白系豆が、いずれのウズをなして入荷してこようが、今は狭い市場で腕力が強い奴が価格を操作しての相場だから、一万五百円くらいには、持っていける。

いうなら小型の小豆相場である。

しかし、長い目で見ると、お調子に乗っている買い方の足もとを、必ずすくわれる時がくると思う。

輸入は十一月限納会までには間に合わないというけれど、次のように考えると今の手亡は売り上がりでよいし、崩れる相場だ。
①消費が止まる。
②十二月限以降は輸入物がウズを巻いて入荷しよう。
③北海道産大手亡は、収穫期にはいる。手亡は凶作ではない、八分作だ。収穫したものは必ず出回る。
④輸入商社は電光石火輸入作業を進めよう。定期市場の高値が刺激した。
⑤新穀手亡は、高く売れる時期に定期へヘッジされよう。
⑥買い方は現物が欲しくて買っているのではない。
⑦納会では渡し物も、かなりあるはずだ。

市場では、お客さんはよく売ってくるというが、花札の札をめくるようなつもりの博打で買っている人たちも多い。

またストップ高の連続は異常であって、必ずこの反動は出るものだ。山高ければ谷深し。古今東西どのような相場でも天井すれば大暴落する。あに手亡のみが天まで伸びようか。

小豆が山を越した。小豆が崩れてくるだろう。もとより強弱なしの小豆であるが、すでに力を出しきり大天井している。それがすぐに崩れず高値に張り付いているとしても、出来秋消費停滞、輸入刺激という下げ要因が累積してくる。

小豆は取り組みが、ほどけたから必ず大暴落してくる。買い方が支えても、また新規に売らなくても、そして霜が降っても下げる時は下げる。

手亡も大暴落する相場になった。

●編集部注

小豆に「赤いダイヤ」という異名がついたのは昔の話。手亡とは白いんげん豆の事。文中にも白系豆という記述がある。

小豆同様、北海道で栽培される農産物で、ここで登場するのは、恐らく大手亡相場であろう。

シカゴ穀物市場で取引される大豆やコーンは、IOMといって産地が同じ。それゆえ天候などの変動要因は同じになる。

赤い小豆と白い大手亡も、このIOM大豆とコーンの関係と変わらない。北海道か五大湖周辺かの違いだけである。

小豆との鞘取りに使用していたという話は聞いた事があるが、実際に手亡相場を張った人は、もう残り少ないと思う。

【昭和四六年九月二十日手亡十一月限大阪一万〇一九〇円・五〇〇円高/東京一万〇二六〇円・五〇〇円高】