昭和の風林史(昭和四六年十月二日掲載分)

嬶質の買い場 目標二万三千円

この相場は大反騰していく。ストップ高連続三発という場面も近い。二万三千円目標だ。

「白菊の目に立てゝ見る塵もなし 芭蕉」

小豆相場は腹を据えて買うところにきている。
刈り入れが進んで、およそ八割以上(十月一日現在)に鎌がはいったところであるが、青々としたサヤであり、これが凍結にでもあえば、まったく商品としての価値がなくなる。しかもその後の落葉病による立ち枯れは実に凄惨(せいさん)なもので、これが恐らく、後になって相場に響いてくることであろう。

天候のほうは、これから毎日が霜である。そして凍結であり雪である。それは、オーバーな表現ではなく、現実である。

市場は、なにか勘違いしているように思えてならない。六十一万俵収穫から、大幅に減少こそすれ、ふえることはないのである。

昨年も立ち枯れ落葉病で買われたあと相場は暴落した。しかし現実の厳しさはその後になって判明し大暴騰して行った。

筆者は思う。確信を持って今の小豆相場は成り行き買いである―。風林流に申せば〝嬶(かか)質〟で買うところだ。

青刈りと落葉病による減収は、後になって判然とするだろう。相場は売り方の叩きが効果をあげているように見えるが、この叩き込みが必ず次なる大反撃をまねくのだ。

相場地合いと、値段とを見ている限り、買えと言っても買えないだろうが筆者には次なる大反騰三千円が見えているような気がする。

風林火山を信ずる読者は、この小豆相場を黙って買う。

ストップ高連騰三日の場面が近い。安値に売り玉を残している人は、今こそ売り玉を手仕舞うか、同数以上を買い建てて二万三千円相場に準備されたし。

相場は嬶(かか)質である。

すでに下げ余地はない。本年最後の買い場となろう。

●編集部注
嬶質とは、何を指すのか。良く分からない。

何ですか?と、尋ねようにも、尋ねる相手は、もういない。

仮に尋ねる事が出来たとしても、茫洋とした、何ともいえない声色で、「ん~、何やったかな~」と返される気がする。

改めて調べてみると、嬶という漢字は「かかあ天下」の嬶なのだとか。更に、つくりの「鼻」は鼾の事を指すらしい。

人目を憚らず、どっしりと、鼾をかいて寝る嬶。

この相場読めた!という安堵と自信が嬶質なのか。

下手に相場を見ると迷うから、張ったらあとは寝ておれという事なのか。

【昭和四六年十月一日小豆三月限大阪一八七四〇円/東京一八七一〇円】