昭和の風林史(昭和四六年十月四日掲載分)

今週は大爆走 S高のスパーク

小豆も手亡も底値圏である。筆者は重ねて言う〝嬶質買い〟だ。今週は爆走して行く。

「十六夜の桑にかくるゝ道ばかり 移公子」

昨年の北海道小豆の収穫が百十三万俵。輸入小豆が約三万㌧。その相場が平均一万五千五百円。

本年の九月一日現在の作柄予想が六十一万俵。この数字を基本にして考えても輸入小豆の五万㌧や六万㌧は必要である。ところが収穫予想は十勝、北見の大場所の落葉病で九月一日現在時点より大幅に減少している。凍結・霜害がなくとも全道出回り四十万俵を割ると見られる現在、相場の一万八千五百円は大底である。

これからは毎日が晴れれば霜であるし、雨が降れば降ったで未完熟の青刈りが腐敗する。しかも凍結とくれば、どのようなことになろうか。

問題は中共小豆であるが、交易会での商談は恐らく、むこうも値を崩すような売り方はすまい。

北海道の小豆生産者も二万円以下では売ってくれないだろうし、出盛り期すなわち端境期現象となっては、一万八千円台の小豆相場は、成り行き買いしかないのだ。

ここで面白いことは凶作年は不思議と十月に底を打って、これが十一月、十二月と暴騰していく。

市場のほうは商いが薄い。三、五枚の売り物で値が消える。

しかし、大台三ツ変わりのこの押し目は、再び火花を散らしてストップ高のスパークを充分に予測せしめるものである。

すでに下げ余地はない。週末の東穀、大穀の出来高は陰の極を思わせる細りようであった。

思えば、あれだけ大荒れした市場だから、御休憩の時間があってもおかしくない。

だが今週は恐らく産地の冷え込みが厳しく、青刈りしたその上に霜がふるか、凍結して、大きな被害を出すことは、非常に確率が高い。

北海道明治の鈴木樹社長ではないが、立ち枯れや、その後の収穫減の真実を、強く叫べは叫ぶほど世間からは誤解を招くようだが、四十万俵収穫の真実は知るものぞ知るし、それはいずれ必ず明らかになることである。

真実が伝わらないのは産地業者が安値を売った。定期を売り、オッパを売った。従って下げ賛成のムードが支配しているためでもある。

筆者は重ねて言う嬶質買いである―と。

そして小豆も手亡も底値圏である。今週は爆走するだろう。

●編集部註

ロシア映画に『日陽はしづかに発酵し』という題名があったが、この時の小豆相場は、値動きの喧騒の裏側で、しづかに発酵しつつあった。

【昭和四六年十月二日小豆三月限大阪七〇円高/東京一三〇円高】