劇的大反騰へ 手亡も底入れす
手亡が急騰しそうな格好だ。底が入った。小豆も劇的反騰場面が展開されるだろう。
「秋しぐれ塀をぬらしてやみにけり 万太郎」
投げも投げたり手持ち現物まで板垣某はぶん投げて、ついでに人絹まで投げてしまった。一時数十億という儲け勘定だったが半分ぐらい減ったのではなかろうか。
それにしても立派なのは阿波座のS・S親分である。なんといっても大阪阿波座ではボスであり人望がある。
伊藤の徳さんのことはそれほどよくいわない場の連中もS・S氏になると①頼りになる②儲けさせてくれる③難かしい相談にも乗ってくれる④お金持ちだ―と評判がよい。
それに親衛隊長にはアパッチ族が無条件に忠誠を誓っていることも無視できない。
小豆の買い方は、いうならアパッチ砦の親衛隊長にやられたみたいである。一人一人が弓の矢一本ずつとしても数でいくから命取りになるし、情報の伝達となるとこれはもうかなわない。
S・S親衛隊長の強味は機動力のあるこのアパッチ集団に全幅の信頼を受けていることである。
さて、とどいたような感じの小豆である。
証拠金も大幅に引き下げられ、建て玉制限も緩和されて、これで大衆が参加し取り組みが少しずつでも太ってくれば、また一局の相場である。
戻り売り人気で高ければ売ってこようし、わが買い玉は遥か雲のかなたの引かされグループは、恐らく陣型を整備してナンピン買いにはいるであろう。
相場さえ落ち着いてくれれば、それで絵になるし、ケイ線になる。だだもりのあとの真空斬りでは、近寄ることもできなかった。
一方、悪い悪いの手亡も安値を泥靴で踏みつけるように誰彼なく売り込んで、これでカチーンと底入れしている。
恐らくこの手亡、意外な反発があるだろう。線型はなにかを物語っている。戻りを売ってくるかもしれないが、そうなれば取り組みが太り、面白くなる。今の値段の手亡を買っておくのも方法で、手亡が急騰すれば小豆も反騰する。
特に小豆の反騰は劇的場面となるだろう。
●編集部注
勝ち戦の主人公を描くよりも、負け戦の主人公を描くほうが、よりドラマ性がある。そこで登場する言葉がやがて表舞台に上がり、人口に膾炙するケースが少なくない。
当節よく耳にする「かぶきもの」という言葉などは、近年の代表例か。
隆慶一郎が小説「一夢風流記」を書かなければ、それが漫画化されなければ、おそらくここまで世に広まる事はなかった。
前田慶次郎利益は典型的な敗者側の人物である。
【昭和四六年十一月五日小豆四月限大阪二一〇円高/東京一五〇円高】