昭和の風林史(昭和四六年十一月五日掲載分)

底値圏に達す 自律反騰の番だ

さしもの小豆も底入れしたように感じた。自律反騰で下げ幅の三分の一戻しは可能な相場だ。

「鶏頭伐れば卒然として冬近し 元」

悪い悪いの手亡相場が値段にとどいて、お先に底入れ型となっている。

手亡の安いところは実によく売り込んだ。

しかし相場つきは数日来なんとも底堅く、売っても下値は取れない感じだった物にはそれぞれ値ごろがあって、一時的人気で下げすぎても、時がくれば自然と復元する。

その手亡であるが大きく戻せば再び売られようが、今回の下げで下値の目途がついただけに①悪材料の折り込み②因果玉の整理進む―で、あとは日柄をかけての底練りとなるだろう。

一方、小豆のほうもさしもの恐慌相場も末期にきて、値段が固まる段階にはいっている。大きな買い玉も投げることによって底入れ条件は揃う。

輸入小豆三万㌧、あるいは四万㌧説で、狼狽と、意趣返しの叩き、商い伴わずの、まさに真空斬りという下げであったから、これも大きく下げ過ぎの、行き過ぎが見られた。

さてここからであるが、先行き需給面を、どのようなところに線を引くかである。市場の弱気筋は中国小豆や台湾、韓国小豆など合計して、すでに供給面に不足なしという計算だから一万五千円傘、一万二千円底―という極端に安い見方をしているが、忘れちゃいませんか?といいたいのが北海道の凶作である。今もって十勝の小豆の集荷が10%程度ということは、なにを意味するかである。

生産者も二万円相場を見てきているだけに、一万六千円では積極的に売ってはこない。中間地帯がよかったというけれど、その出荷状況を見ていると、売り方の騒ぐほど、よいとは思われない。

ともかく交易会が終わるのを待って、全体の需給関係を掌握し、買い方の陣型立て直しはそれからでも遅くはないだろう。

それにしても相場としては下げ幅の三分の一戻し、六千円下げの二千円反発は自律的にも期待できるし、案外きょうの在庫発表などをキッカケにして地合いが急変することも充分予測出来る。

相場は底入れしたと判断した。

●編集部注

お客様が夢を見るのは自由だが、夢を見せるのは時に商品先物の営業マンにとってリスクが生じる。特にお客さんが曲が っている時はなおさらだ。

かくも長き下落に、買い方は反騰の夢を見る。新規買いの夢もあろう。

しかし大事なのは、相場が逆に行って夢から覚めた時だ。営業マンがここでまた夢を見せると、大概その夢は悪夢になる。

いくさは、退却戦が一番難しい。これだけの下げの後、相場巧者達の退き方を、とくとご覧あれ。

【昭和四六年十一月四日小豆四月限大阪二一〇円安/東京九〇円安】