昭和の風林史(昭和四六年十一月二十六日掲載分)

買い方の反攻 次第に功を奏す

高安七千三百六十円幅という当限が納会する。買い方はあと続くものを信じているだろう。

「熱燗や炭に焔が伸びちゞむ よしや」

納会する当限は二万一千三百五十円の高値があった。

この限月の生まれ値段は一万四千四十円で、その日に付けた安値一万三千九百九十円が一代の最安値であるから七千三百六十円幅を上げた勘定になる。その相場が四千四百円幅を下げた。

穀取が再開された当時小豆一俵の相場が四千四、五百円という時があった。その後六千円から七千円相場の時代が随分続いた。買い占めなどでそれが八千円抜けから九千円近くになって取引所があぶないと大騒動したものである。

世の中の移り変わりは本当に激しい。今、この小豆相場が一万円を割る―などと言ったら人は笑う。あり得ないからである。小豆が六千円や七千円相場の時に二万円もあり得るなどと申せば気違いと思われただろう。

さて十一月の納会が済むと、十二月の当限納会が例月と違って早く来るから気ぜわしい。街にはジングルベルが鳴る。もう師走の影が足もとまできている。

相場のほうであるが今年の納会の値の居所が年内の相場の帰趨を決めることになるだろう。

十月の納会は高場の東京と名古屋では予想外の急落納会となったが、今月はこのあたりでの納会と考えられる。

これから年間最大の需要期にさしかかるのに、先ごろ契約された中共小豆はほとんどまだ入ってこない。

道産物も年末一般の荷動き輻輳のおりから貨車繰り難も伝えられているので、多少値が上がったところで消費地に現物が集中するということもなさそうだ。

ザラ場の食い合わせ玉も年内にはどうしてもほどかねばならない。

つい十日ほど前、市場は売り方の思うままであったが、ここにきて再び買い方が主導権を握った。

ないと思った第三次成約を材料に売り叩いたマバラ売り方が、今度は追証ぜめからイレに出る場面だ。誠に因果はめぐる小車に違いない。

納会のあとも来月十七日の農務省最終収穫推定量の発表まで次の大きな手がかりがないので、内部要因中心の動きとなるだろう。

売り方、買い方ともにあと一カ月で年末を迎えるということだけは同じ条件である。

年末特有の餅つき相場が売り買い双方のカケ引きの中で展開されよう。

●編集部注

昔は公官庁の御用納めと取引所の大納会が同じであったため、12月の営業日は通常より短い。当然カケ引きも短期戦だ。

【昭和四六年十一月二五日小豆四月限大阪一万六四〇〇円・一九〇円高/東京一万六四七〇円・三〇円安】