昭和の風林史(昭和四六年十二月二日掲載分)

年末波乱必至 安値をたたくな

一転してまた戻り売り人気が強くなった。逆らうわけではないが悪目買いといきたい。

十二月は予想外の大波乱で始まった。

買い方増山一派の後退説、輸入大手商社の三晶の期先売りそれに韓国、台湾小豆の契約進捗などデマとも早耳ともいえる弱材料をはやして高寄りのあと、各市場でほとんど全限月ストップ安を演じた。

しかし、このような不確定な材料が相場にてきめん利いたのは相場がすでに当然下げるべき居所にあったからである。

いうなれば買い方は孤独であったし、線型は崩落を待つ姿であったし、S安を暗示するに足る地合いでもあったのだ。

市場の人気というものは安くなれば弱くなり、高くなれば強くなる。ここにきて期近はともかく先三本については戻り売り人気が圧倒的となっている。

もちろん需給相場となった現在、この十月七日の二万千四百円(大阪先限)は大天井と確認されているし輸入契約の状況からみて戻したところでたかだか一万六千五百円がらみという考え方は、それ相当の説得力をもっているし、今後の輸入の動向如何によっては一万三千円割れも可能とする超弱気的な相場観も成り立つわけである。

だが、材料と数字だけで相場が判るのなら誰も苦労することはない。

まして現在なお現物の品がすれが顕著で、いろいろと取り沙汰されていることも真偽とりどりである点からみて、そうムキに弱気になることは適当ではないと思う。

まして今月生まれた五月限以降は、もはや来年の天候期相場の限月となってくる。

来年のことをいうと鬼が笑うかもしれないが、能登谷氏式の年単位豊凶分析表によると、来年四十七年も依然要注意の年とされている。

かようにまだまだ需給最終見通しがたつまでには幾多の紆余曲折がある。

それだけ買い方の買戻しの余地は十二分に残されていることを忘れてはならない。

先月十七日の安値を叩いた弱気は一週間で千五百円かつぎあげられた。

また、これからの安値を売り込めば、あの時の二の舞になりかねない。

これからの悪目は買い下がり方針である。もっとも噴いたところは売らねばならないが。

●編集部注
 上記の最後のセンテンスに全てが集約されている。

 「大衆は全て間違っている」のであれば、逆目につくのが相場のお作法。悲観で買い、楽観で売り、また悲観で買う。

 ここ数日のコメントと、当時の日足とを見比べると、今で言う〝スウィングトレード〟を東京小豆でやっている事になる。

 商いが盛んだと、こんな事が出来る。今の国内商品では難しいと思う。

【昭和四六年十二月二日小豆五月限大阪一万五三九〇円・九〇円安/東京一万五五九〇円・八〇円安】