昭和の風林史(昭和四六年十二月七日掲載分)

年内強気一貫 逆鞘に売りなし

逆ザヤに売りなしの相場である。問題は十七日の農林省発表数字だが七十四万俵以下ならS高だ。

「■八(=臘八:ろうはち)や今朝雑炊の蕪の味 惟然」

17日の農林所の収穫発表であるが、五等検込みで七十五万俵という線を予想している。

それで七十一万俵ならストップ高、それ以下なら連続S高。七十八万俵でストップ安、八十万俵台なら連続ストップ安という見方をしている。

ところで、十一月の13日と十二月の2日で安値を叩いて、これが最悪の水準という相場になって、今の段階は、大きな下値かための格好。

材料としては、これまでに硬軟ともにあらかた織り込んでしまっているだけに十七日の発表が待たれるところだ。

強気筋は、ただいままでの判断の輸入量では、年間需給をまかないきれず相場は年末から春にかけて先限の一万七千円台があると見ている。もとよりそうなれば期近限月の一万九千円相場であろう。

市場でいま聞かれる弱気の下値目標は一万三千円台である。強気と弱気の中間に相場は浮遊しているところだ。

それにしても強気筋が頭にきている問題は、あること、ないこと、市場で噂され、それがいちいち相場に響くことで、アパッチのゲリラ戦法に、へきえきしているようだ。

しかし、相場としては底を固め、これで人気が戻ってくるようなら、納会にかけての踏み上げ場面と春高期待で、全般の水準は今より千円ほど上のものになるだろう。

方針としては〝逆ザヤに売りなし〟―。押し目買いを一貫するところだ。

筆者は、この原稿を書いたら名古屋に出て、業界を取材して夕方から向博社長の〝みかと商事〟の中日パレスでの忘年会に出席し、夜のうちに東京に出ておこうと思う。名古屋に行くといつも相場は暴騰するが、今度はどうだろうか。

●編集部注
昼の名古屋が大嫌いであった。その昔外務員として日本中を回っていて、元本保証すると一筆書いたら取引してやっても良いといわれたのが、後にも先にも名古屋の地であった実体験がトラウマになった。勿論断った。

反面、お客さんと飲み歩いた夜の名古屋は大好きであった。栄、錦、伏見、金山、大須、名駅等々。
 
名古屋には、関東にも関西にもない、何か独特のぬくもりがあった。ましてやこの時代は、今では想像もつかない隆盛を誇りし昭和四十年代の商品取引市場である。この時の業界の忘年会はさぞかし凄かったに違いない。

相場はロスタイムに入っている。年初めから五千円弱上げて、三千円近く下げたこの年の相場が、終わろうとしている。

【昭和四六年十二月六日小豆五月限大阪一万五八三〇円・八〇円高/東京一六〇二〇円・二五〇円高】