昭和の風林史(昭和四七年一月七日掲載分)

恐慌相場へ!! 音たてて崩れん

これからが恐慌相場である。身の毛もよだつ奈落の底へ音をたてて崩れよう。大暴落だ。

「若菜摘む美しき日の野辺にあり 孔甫」

とうとう一万四千円の大台を割ってしまった。割ったから、どう―という感激もない。恐らく一万三千円そこそこまで垂れ込む相場で、四千円割れからのストップ安だってあり得るし、この原稿を出稿したあとにストップ安がはいるかもしれない。

今月末からの北京商談で五千㌧ぐらいは出来そうだという見方。春の交易会で一万㌧か。収穫期にはいる台湾小豆が五千㌧。韓国は、もうないというけれど掻き集めれば二千㌧ぐらいのものは出せよう。ざっと二万二千㌧。三十七万俵。このほかコロンビアが作付け二万ヘクタール。反収二俵という情報もあって四十万俵の収穫は見込めるという。

買い方にとっては震撼とする話だ。

既成約の輸入小麦は香港経由で二万㌧。韓国、台湾で五千㌧。合計約四十万俵であるし、これまでに輸入されたものが四十万俵。北海道小豆が六十六万五千俵。

コロンビア小豆を考えなくとも百八十二万五千俵の予想供給数字になる。

去年の供給量が百六十二万俵(北海道百十三万俵、輸入四十九万俵)だった。

値は荷を呼ぶ。輸入ものが、まるで泥靴のままドカドカと新入してきてはたまったものでない。

買い方の投げ。売り方の利食いという手口だ。

誰がどう見ても強気出来る環境ではないし、そういう相場でもない。

もはや値ごろ観など通用しない相場である。

筆者は、北海道小豆の先限が一万五千二百円あたりまで崩れないことには底がはいらないと思う。

売り余地充分の相場でもある。もうは、まだなりという。

買い方の巻き返し。それもあるだろうが、竹槍戦法は、まってましたとばかり売り狙われる。

売り方は、叩くことはない。崩れ落ちる相場に乗っておけばよいだけである。なんら策を弄しないで王者の道を行くが如しだ。

線型は、ここにきてゾッとするような暴落型になっている。線で申せば一万三千円割れがある姿だ。案外そうなるのかもしれないと思った。

これからが恐慌相場である。音をたてて本格的に崩れよう。今から売っても大丈夫。

●編集部注
 誤解を恐れずに書くと何やら嬉しそうだ。

 勝ち敗けの話ではない。相場が動くと、相場師の血は騒ぎだすのだと思う。

【昭和四七年一月六日小豆六月限大阪二六〇円安/東京一六〇円安】