昭和の風林史(昭和四七年一月二十六日掲載分)

下り急行列車 これより発信す

底入れ出直りという見方が強くなってきた。事実相場も強いが、これは反動による戻りだ。

「探梅や途すがらなる杣の梅 羽公」

すこし意地をつけてみたら意地になるほど相場は強い。そして週明けの大引けは、大衆筋に売られていた先二本が追い証取りで踏み上げに持ち込んで、急上昇という格好。

店は総体に上げ賛成である。懐ろが売られているからだ。自己玉の規制というものはあるけれど、中央官庁から遠い地方ほど、その種の規制は杓子定規でない。

なかでも異彩を放つのは関門商取における豊栄の精糖である。穀物では、そこまでひどいところはないが、やはり自己玉のウェイトが大きいと見なければならない。

ところで数日来、東京市場では太平洋の手が目立つ買いっぷりである。大量買い玉を抱いたまま暴落場面を辛抱してきて、いま相場が大きく戻したため、気分的にも資金的にもゆとりが出てきたようである。

とにかく買い方は日に日に力をつけている。安値の買い支え玉が利になりこれを利食いするだけのゆとりが、相場については売り方苦戦はまぬがれない。しかも輸入に関する材料はまさにピタリと止まってしまった。

そして、つくられていた線型が相場自身の力でグイグイ伸びだしては、先限五千円必至が言われるのも無理はない。

買い方も苦しんだのだ、売り方が苦しんでも、それはお互い様。

問題は、どこまで辛抱が出来るか?と、伏兵コロンビア小豆がどこで姿を現すかである。

また、北京商談を相場が刺激するかどうかだし、台湾小豆の動きがどうなるか。すべては海外要因であるため、夜が明けてみなければ判らないことばかりである。

それにしても、そう思うから、なお高いのかもしれないが、ここから強気して上値をどのあたりに置いているのか。

いや、強気は、この相場を戻りとは見ずに、底入れ反騰出直りと見ているからあくまで押し目買いだという。

すでに市場でも、そういう見方をする人が多くなってきた。

だが筆者は、あくまでも戻りであって、この反動高の反動安は、きわめてきついと今でも思っているし、その信念は不動である。

一月も、早や納会。苦しいが辛抱するところだ。

●編集部注
風林火山が業界にひろく愛された所以が、上の文章に集約されている。

 読めば「この人、今負けてるな」と一発で判る。
 
相場は陰陽で変わる。勝敗はオセロゲームのチップの如し。ただ一貫して、風
林火山は敗者へ向けた眼差しに愛がある。

【昭和四七年一月二十五日小豆六月限大阪一二〇円安/東京六〇円安】