昭和の風林史(昭和四七年一月二十五日掲載分)

薄氷踏む如し 崩れは瞬間なり

強気は、かなりの上値を考えているが、相場そのものは、非常に微妙な段階に来ている。

「よみがえるごと氷海多焼けぬ 雨閣」

小豆の期近限月は、ようやく上伸力に鈍化が見えてきた。あした納会を買い方はどのような方針で対決するかであるが、しょせんは一時的な現象にすぎず、無理な工作ををすればするほどあとが悪くなるというもの。

ぼつぼつ北京商談についての話題が、相場に影響してくる時分である。また台湾小豆の輸入についても戻り基調が続いた相場だけに、裏面では活発になるだろう。

市場での商いは、きわめて低調である。百円、百五十円は少量の玉で上下動する。見ていて、手がかり難という格好だ。ただ、基調が売り方のつなぎはずしなどで上向いているため買い方巧者が、急所急所でで力を注ぎ込めば、二百円、三百円幅で押し上げることは出来るし、追い証玉の踏み上げ(これも少量だが)で強い地合いに思える。

目立つ売り方三晶はまったく鳴りを鎮めている。まるで無気味な存在である。この手が再び積極的に売り出せば、もとより今の相場、音をたてて崩れるだろう。三晶売りの声だけで全国市場が電気にふれたようなショックを受ける。

そうでなくても、押し目なしに上昇してきた相場は、ひとたび押し目を入れると、それが押しではなく崩れにつながる。

昨年暮れから一月12日までの下げが、その逆の見本のようなもので、戻りなしの大下げ一本道であった。そして、ひとたび戻りに移ると、単なる戻りへだはな、まるで出直りの様相さえ示すのだ。

これで半値戻しを達成した。しかも週明け(月曜)は夜放れ高の空間窓をあけて寄り付いている。週末の思い地合いを意識して付けた寄り値のようにも思える。

しかし、なにをしようと相場のサイクルは、急落棒下げの、非常に接近していることは疑問のない事実で、納会(26日)まで値の維持が出来るかどうかさえ危ぶまれる。

いま、それを言っても始まらないが、期近の三千円台。期先の二千円台。そういう水準に、この相場は落ち込むだろう。

線型は無条件売りになっている。

昨日も書いたように〝暴落の兆候甚だ濃く、棒下げは必至の段階である〟。

●編集部註

相場に三つの坂あり。上り坂、下り坂、そして魔坂である。
 
三晶実業さんは今もご健在の現物屋さんである。投機の世界で、しかも上昇場面で、派手に売りから入るには大義名分がが必要であったかと思う。
 
エネルギーを貯めている、という表現も出来る。

【昭和四七年一月二十四日小豆六月限大阪三六〇円高/東京三一〇円高】