昭和の風林史(昭和四七年二月三日掲載分)

全く同じこと 昨年の通りか?

押し目なしの三千円棒上げ。去年にもなかったことである。満つれば欠けることもある。

「毛沢東中国が売ってくれば暴落、売られなければ強調。こんな判りやすいこともない」

これは去年の本日付け当欄の見出しであるが、そのまま今日の見出しにしてもよいと考える。

歴史は繰り返すというが、これはあまりにもよく似ている。

去年も一月から二月にかけて中共小豆の成約一本の相場の動きとなり、ヤレ旧正月前には売ってくるとか(去年は一月二十七日)、売ってこないとかという噂で相場が動いた。

日本の商社の連日のようなビットに対して、くる返電は「売り物なし」一本であったことは記憶に新しいところである。

昨年秋の交易会であのような売り方をしたのであるから十二月中にも北京商談が開かれるというのがもっぱらの噂であった。

それがMT交渉も妥結したのに一向音沙汰がない。今では交易会まで契約困難という見方が強くなってしまった。こうなると三千円台を叩いた売り方は煎れざるをえないし、二月新ポの七月限でもつながないわけにはゆかない気持ちになる。

また押せばすかさず買いたくなるし、押し目待ちに押し目なしでもある。

去年の相場とそっくりであるとすれば、結局また二万円をつけにゆくのではなかろうか。

今でもすでに一万七千円は常識、一万八千円という声も聞こえる。大向こうから「どうする、どうする」という半畳もでようという正念場といえよう。

四囲を見渡した環境は、一見まさに売り方不利は否めない。

ただ昨年といささか違っているところがある。在庫が比較にならぬくらい多いということである。

年末現在の消費地の在庫は一昨年末が全部で八万七千俵強、昨年末が二〇万七千俵弱、その差約十二万俵。これが去年は一月末で七万八千俵であったのが今年は輸入物中心になお若干ふえる見通しという。

これを受け渡し枚数でみても去年一月が全国で三百七枚、今年は千三百七枚、四倍以上の品物がある。

相場は理屈では動かない。しかも現物は買い方の手中にある。在庫が多いからといっても中共の輸入物があと続かないと年間需給はバランスがとれない。

繰り返すようだが、中共が売ってくるかどうかに買い方も売り方も勝負をかけているようである。

考えてみれば相場ではない相場である。

●編集部注
 〝相場ではない相場〟とは言い得て妙な表現。

 商品先物取引は、投資ではなく投機であるが故にこのような〝相場ではない相場〟が登場する。

 是非に及ばず。粛々と対峙するだけなのだが。

【昭和四七年二月二日小豆七月限大阪一万五七七〇円・三三〇円安/東京一万五八二〇円

・三〇〇円安】