昭和の風林史(昭和四七年二月十四日掲載分)

仮装なれあい 八十八条に抵触

穀取は商品取引所法第八十八条の存在を認識せよ。小豆は、これでも相場か。

「とく起きてヴァレンタインの花市に 橙青」

大阪市場では市場管理委員長の店が気配を煽っておいては、すり抜けている。協会長の店も似たような手口をよくやる。

お客さんの要望であっても、こういう事をしては、感心したものでない。―それを承知していても、しなければならないのかもしれない。あるいは彼らは言うかもしれない。それは単なるテクニックである―と。左様。やむを得ない場合だってある。

だが、市場管理委員長の店や、協会長の店でない、ほかの取引員が、これと同じようなことをした場合、強い者には弱く、弱い者には強い取引所当局は、すかさず態度を硬化させ、調査をするだろう。

市場管理委員長や協会長の店なら、なにをしても大目に見るという風習はまったく困ったものだ。

取引所は厳正中立、誰に対しても公平であるべきだ。まして価格操作防止委員会という立派な委員会まで、わざわざつくったのである。

強い者には弱く、弱い者には強いから取引所当局者は商品取引所法第百五十四条に、びくびくしなければならないのである。

これは、大阪穀取のことを言っているのではない。第百五十四条は、名古屋穀取、名古屋繊取、神戸穀取、豊橋乾繭取引所の建物の避雷針に直撃を与えた。大阪穀取や、東繊取などには関係のない話であるが、総体に関係のある取引所も、関係のない取引所も強い取引員には弱く、おとなしい取引員に対しては常に強い態度である。

左様。筆者は嫌味を書いているのである。

東穀取にも聞こう。大阪穀取にも聞こう。

今の小豆相場。これが、なんら疑問を持たない相場であろうか?。

誰もが、はっきりといっている声が聞こえないはずはない。一部特定の、ひとにぎりの筋が、複数の取引員に、きわめて計画的、作為的に仮装売買、なれあい売買を行なっている事実を取引所は見て見ぬふりをしている。

左様。

取引所法第八十八条に抵触する行為だ。

取引所は強いものに対しては〝三猿主義〟に徹するつもりか。

●編集部注
商品取引所法は何度かの改正を経て、平成二十年代から名称が商品先物取引法に変わっている。

今回、本文に登場する第八十八条とは、価格操作につながる仮装売買や馴れ合い売買などの禁止を謳ったもの。では、具体的にどんな売買か。

平成二六年三月、ちょうど日本の映画館では『ウルフ・オブ・ウォールストリート』という映画が公開されている。

第86回アカデミー賞にもノミネートされていたこの作品、簡単に言うと米国株の価格操作を派手にやらかして捕まった実在の人物のお話である。

映画なので手法は誇張はされているようには見えるが、ここで具体的に書くより、この映画をご覧になると理解が早い。

怒鳴り、がなり株を売りまくる電話セールス。その売買指示を出す上司に、その売買を画策する更に上の人物。更に…。

時と場所は違うが、当時の風林火山はこの類の構造に、そしてこの類の構造に無為無策な監督官庁に対して怒っている。

【昭和四七年二月十二日小豆七月限大阪一一〇円安/東京二〇〇円安】