昭和の風林史(昭和四七年二月二八日掲載分)

静岡筋投了す アパッチが買う

戻り売りの相場であるし、突っ込み買いの相場である。今週の安いところを拾う手もある。

「すり鉢に薄紫の蜆かな 子規」

崩れもきついが、反発もまた目が覚めるようであった。

大阪市場では数日来、非常に目立つ売り玉の回し玉が旭、藤忠、丸神、大石、山須、乙部、マルモト、和歌山という店を這いまわっていた。それらの玉は週末にかけて消えて行った。鮮やかというべきか。土曜の大引けは阿波座のアパッチ連隊がラッパを吹いて盛んに買った。

注目されていた静岡筋の五千枚に達する買い玉が投げ終わった。一万五千円台から六千円台にかけて盛んに買った手の悪い筋である。この玉が東京でも目立って投げていた。

まんまとやられた格好である。M・M筋は静岡筋の買いに対して協力者と見て意を強くしていたようだが勝負にかけては血も涙もない厳しい筋がぶった斬ってしまった。

山梨の霜村氏は、まだ強気になりきっていない。しかし、下値は、ここから、そう深いとは見ていない。なんと言っても最終的にはM・M氏に協力する態勢で、この主力を潰すわけにはいかないという考え。

雪が舞う中を新築なった山大商事に行った。ストップ安である。行きにくい日である。山大の新築ビルはピカピカ光っている。二階の元帥室には、お祝いの大きな油絵がとどけられていた。まだ包み紙もほどいていない。

もとより元帥は弱気など言わない。窓外に降る雪をじっと見ている。静かな横顔である。

さて、相場はどうなのか。

筆者は、この相場は、戻り売りであり、突っ込み買いだと思った。

きょう(月曜日)から強烈な強気に転換する手もあろう。しかし、もう少し下値があってもよい姿だ。

おもえば四千円を棒に立てた。その相場が大台三ツを割ってガラガラ崩れた。セミプロの大衆は、売り人気である。戻りを売りたがる。

M・M氏にちょうちんをつけて五千円台、六千円台を買った因果玉もまだかなり残っている。

さて月末→新ポ→月初め、どのような動きになるだろうか。

筆者はいずれ積極的な強気にならなければならない相場になるように思った。

●編集部注

 昭和四六年二月二八日に、あさま山荘事件は警察の突入で終結した。

 突入の模様はテレビ中継され、身も心も凍れる事件現場を全国の人々が固唾を呑んで見守った。 この時大写しになったカップヌードルは、美味そうに見えた事だろう。

【昭和四七年二月二六日小豆七月限大阪二七〇円高/東京二〇〇円高】