昭和の風林史(昭和四七年三月二日掲載分

皆殺しの旗を 豹変す買い方針

さあ真紅の旗に黄色いリボンをむすんで高々とかかげよう。強気に転換である。相場は買いだ。

「白酒の紐の如くにつがれけり 虚子」

ぼつぼつ小生は強気に転換しようと思う。

一月12日のあの安値、三晶が叩き込んだ安値近辺で、なんぼ悪い相場でも止まるだろうし、止まれば急反発するはずである。

現在、こう考える。下値は残しているけれど、ここからは売れない。むしろ買い場探しの〝待つ心〟である。

なにがどうだから買いである―という理由は目下のところなにもない。

だから買いである。

相場とは、そんなものである。

強いて理くつをつければ、投げがかなり出た。人気も随分弱くなった。大台を三ツ変えて四千丁高の棒立ち相場が、逆転して大台三ツ割って袈裟に斬った。血煙が立った。

下げてきて安値でのストップ安は見ていて、火を噴く墜落機の突入場面のようである。

よし貧乏してでもいいから、この小豆、強気してやろうという気になってきた。久しく無かった闘志である。

貧乏質に置いて、苦労してみたいという、そういう魅力がこの小豆に出てきたのである。

もとより、ストップ安幅(七百丁)は腹をくくって一万二千七、八百円あたり、あってもいいのではないか、あれば、もう一発かます、つもりでの強気。

そうなると、おもしろいもので逆に相場はストップ高をしたりするものだ。

輸入小豆の需給緩和は百も承知。春の交易会先刻承知。

悪材料すべて承知の助であえて強気に転換するのは相場が知ったらしまいという事もあるし、悪材織り込めば毒薬変じてS高となるからだ。

筆者は29日の相場が新ポにあると見ていたのである。そうしたら相場の方が一日早かった。

もとより、いろいろな工作もあろうし、見えすいた画策も一般的に知られているところである。

ある時は〝風林〟の記事を逆手にとったりされる。しかし、相場は相場である。

今週から来週八日までの安値は、買い場になると判断した。

さあ真紅の旗に黄色いリボンをむすんで高々とかかげよう。そして戦闘ラッパを吹け。

●編集部注

実際の所 「風林火山の見立てに向かえ」という相場の張り方はあったと、古強者に聞いた事がある。

商いが潤沢な巨大市場でこの姿勢であったら、大尽になっていただろう。

日本の商品先物市場は彼には小さすぎたのだ。

ならば、市場を大きくするために何をすべきか。その試行錯誤が始まる。

【昭和四七年三月一日小豆八月限大阪一万三九四〇円/東京一万三九〇〇円】