昭和の風林史(昭和四七年三月十三日掲載分)

今週は高い!! 下値調べ完了す

下値を調べた格好の相場だった。10日の東穀S安でアク抜け。また買い方支配の相場になろう。

「渡御先の鹿追うている舎人かな 橙青」

三本の叩き込み陰線。これで投げを強要された格好。週末は下値にも限度、限界のあることを知らしめた。

十日発表の札幌管区気象台の北海道暖候期予報は今年も北日本は冷夏型を予想している。

すでに先二本は天災期限月だ。三千円どころなら天候に勝敗を賭けて、長期思惑をしてみようという人も多い。

現在、買い方主力はいろいろな悪質なデマを飛ばされたりしているが微動だにしていない。在庫を織り込み、台湾小豆を織り込み、そして買い玉のふるい落としもあったし、彼岸、花見行楽の需要最盛期にはいる。

一気に棒立ちする相場ではないが下値を充分固めたから、水準を徐々に切り上げていくだろう―と強い信念を持っている。

しかも、本年の北海道の夏は必ずしも天候に恵まれそうにない。小豆相場を強気する側にすれば、長期予報は百万の援軍である。

弱気している人たちは春の交易会で中国は値段を下げて売ってくるだろうということ。かなりの数量になるだろうと予想している。

あるいは、そうなるかもしれない。しかし、幾らでも買えるとなれば、商社もいままでみたいに食指は動かないし、採算を考えるから、売り方が予想し期待するほどの契約はまずなかろう。

北海道は二等品が姿を消し、三等品も供給力が限界にきている。

一方では八万俵からのタナ上げがあり、資金面は豊富ときている。

市場人気は、供給圧迫、仕手崩れ、春の交易会―等々を連想するから、どうしても戻ると売りたいし、また、大きく戻したところを売っておれば、これまで何回も利になった。

しかし一月の12日底、二月の12日頭、三月の10、11日底という見方もなりたつし、三月10日の東穀S安で灰汁(あく)が抜けたと判断できるふしもあり、戻りを調子に乗って売っていくと、予想外の高騰につながるかもしれない。

聞いてみると、安いと、どこまで下げるのか見通しもたたぬ深い迷いに包まれ、しかもうかつに売れば買い方に、ひねりあげられることを恐れている。だから戻りをこれからも売ってくるだろう。

●編集部注
陰線三本叩き込み―買い方から見れば、関が原の合戦における小早川勢への鉄砲打ち掛け場面。

ただし、歴史には〝まさか〟がつきものだ。

関が原の合戦も、陣形だけなら西軍の方が圧倒的に有利であった。商品の関が原も、その〝まさか〟の時間が迫っている。

【昭和四七年三月十一日小豆八月限大阪一万三四八〇円・一七〇円高/東京一万三五九〇円・二四〇円高】