昭和の風林史(昭和四七年三月二八日掲載分)

悪材織り込み 徐々回復の相場

千五百ぐらいの下値はあっても買い下がる気なら損の見えている小豆だ。クロウト筋は総弱気。

「日輪に消え入りて鳴く雲雀かな 蛇笏」

各社とも顧客筋は強気になっているそうだ。この小豆を積極的に買ってくる―という。新規もここに来てよく出るようだ。小豆相場が増山仕手と、それのちょうちんをつけた買い方の壊滅によって、取り組みがバラバラにほぐれ、値段も革命的安値に埋没した。

そのことによって相場の性格は〔陰謀的腕力の仕手相場〕から→〔仕手崩れ終戦処理段階〕を経過して→〔国際的需給相場〕へと構造を変え、従って、敬遠していた大衆投機家が《正常化しつつある市場》へ思惑の食指を動かしてきた。

おもえば大衆不在の市場が一年半にわたって続いた。その間、取引員も取引所も、また大手思惑筋もヘッジャーも、いかに大衆から見放された市場が、ギコチなく、弾力性のないものであるかを痛感した。

大衆は、まだ穀物相場を全面的に信頼していないが、情報を提供する信用のある取引員での、自分の資力に応じた投機なら、やはり小豆相場が最も妙味があるということを知っている。

地方筋、あるいは一般顧客筋の買いに対して功者筋・阿波座は、かつてなかったほど弱い見方をしている。

三月六日の一万三千七百八十円(大阪)のストップ安を見て、いち早く弱気に転換、それまで強気していた阿波座筋が、まるでカーペットをひっぱがしたように、なりふりかまわずドテン売りしてきたのが、そもそもこの大暴落相場のキッカケとなった。阿波座では、S・S氏(桜井三郎氏)が、くしゃみすればたちまち建て玉の色が紫になる。精悍無比のアパッチ情報は、数分ののちには津々浦々まで伝達される。例えば権威のある大阪穀取理事会で決定される以前に、アパッチ情報は決定事項を伝えてくるのである。

現在、阿波座は、あすの太陽は、もう昇らない―というぐらい弱気である。

従って、小豆相場の取り組みぐあいは、大衆買いのクロウト売りという格好になっている。

常識的には、こういう食い合いでは、クロウト側が勝つものだ。

しかし、相場水準、あるいは下げ日柄、一度ほどけた取り組みなどから、安ければ買い下がる方針なら、損の見えている相場といえる。

●編集部注
今回の文章に、現在の国内商品市場衰退のヒントが隠されている。

いや、隠されてもいない。むしろハッキリ書かれている。単純明快だ。

要は強欲な玄人が、素人をカモりすぎたのだ。

最初から玄人の人間などいない。新参者を歓迎し、玄人に育てない場所など未来はないだろう。

【昭和四七年三月二七日小豆八月限大阪三八〇円安/東京四〇〇円安】