昭和の風林史(昭和四七年三月二七日掲載分)

二千丁戻しへ 叩き込みは買い

馬鹿の一ツおぼえで戻り売りを言っているうちに相場は二千八百円あたりまで窓を埋めに行こう。

「咲くよりも落つる椿となりにけり 秋桜子」

叩いても叩いても、悪材料を海綿が水をいっぱいに吸ってしまったあとは、もう水を吸収することが出来ないのと同じで、どんなに悪い材料が出ようとも下げないし、むしろ逆に相場は高くなるものだ。

先に行って考えられる売り材料は、春の交易会での輸入商談と、韓国と台湾小豆の品質悪からくるダブつきによる圧迫感。それと四月五日発表の三月末在庫数である。

しかし、それらの材料が売り材料になるか、それとも百も承知の無反応現象をおこすのかは、なんと言ってもその時点での相場水準による。

仮りに相場が一万三千円近くまで反騰していての悪材料出現なら再び二千丁下げという場面もあり得よう。だが市場で言う一万円割れの水準で、そういう悪材料が出現したとすれば、相場は〝知ったらしまい〟で、逆に買われることであろう。

さて、一万一千円どころの値段は、仮りに崩れても下に千五百丁。ならば買いさがればよい―という損の見えている買い場である。現物背景の売り方が、どれほど売り叩こうと、それは水を吸った海綿でしかない。

春の彼岸中を下げて三月23日、ひとまず底入れした。

当面、反発するのは、自律反騰で六千円下げの三分の一戻し二千丁。まず考えられる線だ。ただし、一万二千円抜けから二千八百円目標で、大衆筋が買いついてくると、再びぶっ叩きにあうかもしれない。

筆者はここで、あるいは、ということも考えておかなければならないと思う。

あるいは、交易会で日本の言う安い値段に応じてこないかもしれない。

そうなると、相場は人気の花。半値戻し地点の一万三千九百円あたり、北海道の天候不順や作付け面積などを材料にして踏み上げ相場が展開しかねない。

従って、ここのところは週末の時点(一万一千七百円)から上に二千丁。すなわち一万三千七百円。最悪わるくて下に二千丁の九千七百円。この圏内での動きとなるだろう。

目先勝負なら、戻り売り人気が強いだけに、逆に買うところである。二千八百円までの窓は埋めよう。

●編集部註
 嗚呼、こういう場面が東京金にもあったなぁ、とつい思ってしまう。

 今から十五年前、東京金が一〇〇〇円を割れるなどと考えもしなかった。
相場はレンジをのたくった挙句に大台を割れた。

 これより、小豆はのたくり相場に入っていく。

【昭和四七年三月二五日小豆八月限大阪一一〇円高/東京一五〇円高】