昭和の風林史(昭和四七年三月三十日掲載分)

春風に乗って 三千円台に回復

六千円下げの二千丁高は三分の一戻し。千円棒を立てて押し目買い。相場はいよいよ判り易くなる。

「振りかへり消ゆく土筆もありにけり 汀女」

小豆は千円棒がはいった。

あれほど悲観されていた納会も、逆に買わされたりして、人気の裏を行くとは、この事だと思わしめる。

千円棒を入れた相場は、あと少々押しても一万三千円近くまでの上昇が考えられる。

先限で二千七百九十円までの空間マド。七月限で二千七百五十円。

こうなると、安値から二千丁戻しで、二月12日の高値に対して三分の一になる。

高値の因果玉が失神相場で整理されたことは誰でも認めよう。
安値で、かなり纒まって売り込んだ。その玉が、もう千円引かされている。

もちろん安値を海中に飛び込む思いで買った勇気ある人はこれから利食いにはいろう。買い玉の利食いと戻り売り方針の売り玉で押し目が入るところかもしれない。

押してくれば、千円棒を入れるぐらいの〝強い〟相場だから、買わなければならない。押して三百円か。

①順ザヤの強味②花見需要③悪材料織り込み済み④大衆の根強い買い⑤ほどけた取り組みが、安値で組み直した⑥新たな強力な買い仕手の介入キザシ⑦そして高値当時の半値という安さ⑧あと悪くても千丁、千五百丁の下値を見ればよいという買って損の見えている相場。

そこへこれから北海道の天候がからんでくる。ソ連は大凶作(冬まき穀物)でソ連全土から召集された政府・党関係者は秘密の会合を開いて国家的非常事態に対処しようとしている(27日・朝日夕刊)。中国大陸の天候はどうなのか。もろもろの材料を検討しなければならない。

にわかに阿波座連合は強気に転換してきた。山梨も自社表面は売っていたが、一万一千円割れを数店の取引員店から下村昭平氏個人は二千枚とも三千枚ともいわれるほど買ったと噂される。

敵をあざむかんと欲すれば味方をあざむくべし。虚と見せて実。実と見せて虚。相場師は常に大きな嘘と小さな嘘を武士の大小の如く身につけておかなければならない。

二千円戻した地点で交易会の商談で再び崩れるかどうかは、それは交易会次第であるし、相場の御機嫌如何であるから誰にも判らない。

●編集部注
 今も昔も変わらない。注目点はマドにある。

 テクニカルのお作法では、三月中旬に空けたマドを跨いで騰げれば買いとなり、埋め切れなければ売りとなる。

 買い方は夢を見て、売り方は手薬煉を引く所。

【昭和四七年三月二十九日小豆八月限大阪一八〇円高/東京二〇〇円高】