昭和の風林史(昭和四七年四月十四日掲載分)

売り一貫不変 実勢再認識の要

戻れば買いたくなるが、それは金儲けではできん。売り放しよし、新規売りまたよしというところ。

大阪では小豆が全限安値を更新し、東京でも六月限以降が新安値をつけて一万円に接近したことから目先、反発期待の買い物が入って小戻している。まあ、ここからの下値はいくらもなかろうという漠然とした値ごろ観が相変わらず強い。

しかし、どうだろうか。この戻りのアヤを取りにいくと、かえって大ケガのもとになるように思う。

明日からの広州交易会を前にして、一部商社筋ではすでに積極的に売りつなぎに出ている。これから戻れば当然この姿勢は強まるだろう。

一方、売り大手の山梨商事では、これまで抱えていた現物を四、五月限に全量渡しきるつもりといわれている。三晶も四月限は台湾小豆を主とした大量渡しは必至である。

そのうえ、ここへきて実需不振が目立ってきた。どの商品でもそうだが高ければ仮需要めいた買い物がでるが、安くなれば一斉に買い物が手控えられる。

それに台湾小豆や韓国小豆に対する品質悪の不安が一層現受け意向を鈍らせているようだ。

大阪市場の玄人、いわゆる阿波座筋には比較的強気も多いらしいが、東京の地場筋では二~三百円も戻れば売りたい、もし五百円も戻ればそれこそオンの字であるとしている。

さて、問題は交易会で果たして契約できるかどうかの点である。

強気は商売上手の中共さんのことそう簡単に売り値を下げることはないから大量契約は不可能としている。

しかし、逆に商売上手だから、日本の需給状況が緩んできて、今年が凶作にでもならない限り、大きく戻らないと判断すれば、そこそこの値でまとめて売ってくる可能性も充分との見方もある。

まして雑豆の自由化が近づき、台湾、韓国、コロンビア、カナダ、アメリカなど世界各国が競って小豆栽培に熱をあげ、インターナショナル・レッド・ビーンズとなりつつある時、中国だけがお高くとまってゆけない情勢であることぐらいの判断はしていると思う。

三晶はじめ輸入商社では雑豆が自由化されればいずれ小豆も大豆なみの値段に近づくと考えているようである。

二万円もしたものが一万円になれば買いたい気持ちになるのも当然だが、値ごろ感を前提として相場を張るのは禁物だ。

男なら黙って戻りを売ることだ。

●編集部注
 大相場は時間がかかるもの。ただ、その時間が必ずしも全プレーヤーに適合するわけではない。

 自分の「相場時間」を把握している人は強い。

【昭和四七年四月十三日小豆九月限大阪一八〇円高/東京二〇〇円高】