5月12日付 メリマンコラム 《長期見通し》 その2
『何故ヨーロッパ、特にドイツは、ウクライナ情勢への対応にこうも腰が重いのか? これがあなた方に危機をもたらすロシアの拡大侵攻の始まりだという懸念は無いのだろうか?』
『では何故あなた方アメリカ人はウクライナについてそんなに心配するのか?』
と彼は答えた。
『この問題が米国といったいどんな関係があるというのか? 我々はこの一件がロシアによる近隣諸国への拡大策の始まりとは見ていない。ロシアは自国の利益を護ろうとしているのだと見る。結局、ロシアが海軍を南下させられる出口はクリミアだけだし、もしウクライナがNATOに加わればロシアは袋の鼠だ。南方を自衛することは出来なくなる。NATO加盟国の一員として、もし米国なりNATOがそこに軍事基地か防衛ラインを築くと決め、ロシアがクリミアを経る海域路で譲歩するなら、それはロシアの安全保障と自国の防衛能力への脅威となる。それに加えてクリミアでは投票が行われ、人々は圧倒的にロシアの一部になりたいと望んだ。ウクライナではない。ならば何故、米国は民主主義の下に進んでいる事柄を問題視するのだ?』
『しかしあなた方には、この一件がそれで終わらず、プーチン(実際の発音が “プロテイン” と同じように “プーティーン” と後半部を上げるのだというのも学んだ事の一つだ)を勢いづけて手を広げさせ、ウクライナを奪取した後は次にバルチック諸国かポーランドにさえ手を出すかもしれないという心配は無いのか?』
私はこう聞いた。
『つまり、ウクライナには関わらないと約束し、軍隊に駐留命令など出していないと言いながら、その舌の根も乾かぬ内にウクライナに関与し軍隊を配備した人間がプーチンだ… その、つまり、あなた方は彼がここで終わりだと言えば本当にそれを信じるのか? 何故こう聞くかといえば、米国ではこれが新たな冷戦の始まりであり、プーチンは旧ソビエト連邦の復活を望んでいると考えられているからだ。』
彼らは目を大きく見開いた。私はここで彼らの核心を突いたと思った。
彼は答えた。
『あなたは我々がプーチンを信用出来るかについて話しているのか? あなた方米国人は、あなた方のNSA(米国家安全保障局)が、我々のリーダーやあなた方自身の国民さえもスパイしてきた事が知られてさえ、さも我々が自分達を信用しているかのように話すのだな。しかもあなた方の大統領は、スノーデンがこの隠された秘密を暴露するまで誰の目にも触れさせなかった。彼はそれを終わらせると約束したが、その後約束を変更してスパイ行為の一部を止めただけだ―それも、推測に過ぎない』。
『あなたは、もしプーチンがウクライナを得れば、私達が全体の37%をロシアに頼っている原油の供給を彼があたかも止めるかのように言うが、ならば私達がロシアに依存しなくて済むようになるために、あなた方はどうやってその不足を補うというのだ? それに比べてロシアとプーチンは、彼が約束した通り、原油の供給にかけては長年にわたって非常に信頼出来る存在だった。彼らは私達を困らせた事はないし、私達と共に歩む経済的動機も持っている』。