昭和の風林史(昭和四七年四月二十六日掲載分)

万円台に訣別 四桁相場に戻る

予想以上の安値で、予想された以上の小豆が契約された模様。これから一万円がカサとなろう。

ここ数日来、広州交易会の成約をめぐる情報に振り回されていた小豆相場だったが、二十五日、五百㌧単位で、それも予想されたよりはるかに安い価格(天津小豆トン当たり一三〇ポンド東北小豆同一二二ポンド)で契約されたというニュースをいれ、前場で東西両市場は一気に一万円大台を割ってしまった。これは昭和四十四年三月以来、実に三年一カ月ぶりである。

昨年十月の二万円台から見ると、まさに半値以下。その当時どのような弱気といえども想像だにできなかった水準である。

二万円も相場、一万円も相場というが、今さらながら相場というものの恐ろしさがわかるというもの。

このところ退却につぐ退却、追証につぐ追証に責められていた買い方陣営はまさに白旗を掲げ、惨として声なしというところである。

昨日まで一万円割れは横になっても、嬶を質に入れても買うと豪語していた強気も、事ここに至っては残念ながら見送るしかないようだ。孝行したい時に親はなし。ナンピンをかけたい時は先立つものがない。世の中は無情である。

ところで天津小豆トン当たり一三〇ポンドは、一ポンドを八〇〇円で計算すると六〇㌔裸値で九、一四六円になるという。これにさらに格差千八百円など足すと結局一俵一万一千三百円強になり、商社マージン一〇%を考えると一万二千五百円ともなる。

現在の定期相場とは全くかけはなれた値段であり、天津小豆の現物価格よりもずっと高い。

だから、いまだ一部強気筋はこの成約のニュースを半信半疑でみているし、数量は思ったほどでもなかろうという希望的観測をしているようである。

しかし相場と現物の実勢価格が大きく開いても不思議でないのは、これまで北海道産小豆でも見てきたところだ。

一万円〆台を買っておけば悪くいっても、千円替え覚悟しておけばという値ごろ観からの買い、それも大衆買いが多かったし、まだ天候相場の間には一度や二度の逃げ場はあるとしている強気も多いので、因果玉の整理はそれほど進んでいない。

ともすれば全限一万円割れで目先コツンと底を打つ場面ではなさそうだ。

戻れば当然売りだ。

二万円の相場の時一万円割れが思いもつかなかったように、これからまだ相当な安値もある可能性が強い。

●編集部注
相場は、百人中九十九人が弱いと思う所で買うのが一番儲かるのだとか。
自分は出来ないが。

【昭和四七年四月二十五日小豆九月限大阪一万〇二八〇円・三九〇円安/東京一万〇二七〇円・三九〇円安】