昭和の風林史(昭和四七年六月八日掲載分)

落魄の買い方 総投げの時代へ

天候相場の出足は順調で、霜一発は空砲になりそう。相場は下値を残している。戻りは安心売り。

「草の葉の膚さす梅雨の入りけり 葛彦」

五月25日の安値に近づいてきて、安値を切ったら①売り方の利食いが出るか②買い方の投げが出て安いか③値ごろによる新規買いがはいるか―そこのところに関心が集まる。

しかしそれも、産地の天候次第である。

需給面=心配ない。

取り組み面=買いつき。

人気面=戻ったら売ってやろう。

従って、値ごろというものを考えなければ。相場環境は売りに分がある。

ところが、非常に売りにくいのだ。ここから売る以上は、先限の一万五百円以下を考え、そして九、十月限の九千五百円を目標にしなくてはならない。

ところが、ケイ線では、そういう値段を想定するのが困難である。むしろ八、九、十月限の一万円割れは〝買って勝負〟してみようという人が多いのではないか。

そのような下値にある潜在的抵抗力を、因果玉の投げという圧力(圧迫要因)が、どこまで効力を発揮して、値段を下げさせるかである。

①五月25日の安値前後はモチ合いにはいる②いや止まるだろう③案外この調子(天候予想)では総投げにつながるはずだ。

と、迷うけれど、現在、最も判りやすく、およそ絶対的であるといえることは〔戻したところを売る〕行為ではなかろうか。

安値、安値は売り玉を利食いしていく。建て玉を軽くする。資力にゆとりを持たせる。

そうしておいて待つ。

仮りに利食いしたあと棒で下げる投げがはいったとしても、その時は「充分取るべき利を、勝を急ぎ取り逃したる時、これは笑って済ませる事なり」と本間宗久伝にもあるように、未練を残さない。

北方天気図では、まず霜の心配は解消されている。霜一発は空砲に終わりそうだ。

それで、15日の別れ霜、このあたりが買い方の決断の時期で、発芽→成育順調を伝えれば、市場は、あきらかに豊作人気が充満し、取引所相場は閑になるし、値はジリ貧だし因果玉はさらに苦しい立場に置かれる。

どんどん下がる相場はその下げの反動を利用して急騰することもあるが、ジリ貧で下げていく相場はまず反騰高など望めず、大底を構成するにしてもナベ底を這う型になるものだ。相場は下値を残している。

 ●編集部注
 後になれば、相場など何とでもいえる。

 先に言って、それを有言実行できるかが全て。

 売りと見ていても、こういう時ほど、不思議と下値が固そうに見えて、気持ちが揺らぐものだ。

【昭和四七年六月七日小豆十一月限大阪一万一三四〇円・二八〇円安/東京一万一二〇〇円・三八〇円安】