昭和の風林史(昭和四七年六月九日掲載分)

この底抜ける 抜けたら呆然安

底抜け型になりそうだ。いわゆる〝ずっこけ相場〟。安値警戒が強いだけに抜けたら呆然安だ。

「夕かげり風炉茶のすだれたれてあり 燕郎」

大衆筋はおしなべて安値を切ってくると買いナンピンをかけるようである。天候相場は長

丁場である。買い下がっていけば、将来、利食い場面もあろうという長期戦の構えだ。

従って、五月25日安値を切っても、総投げにはなるまいと見る人が多い。

であると、これは商いが閑になろう。

天候のほうはこれまで申し分ない推移で来ている。恐らく発芽も、その後の成育も順調であろう。

天候相場のポイントは要は〝出足〟である。出足につまずくと、収穫までついてまわるものだ。その点、今年の出足は、きわめて好調で、しかも買い方にツキがないように思える。

この〝ツキ〟も無視できない要因の一ツで、普通の日なら(相場が)飛ぶはずの天候が、日曜だったり、月曜には天気が直ったりして、過去に、こういう(苦しい)経験をしたおぼえは誰でもあるはずだ。

それで大衆は(長丁場を期待して)投げないであろう―という予想を土台にして考える―。天候は良いとする―。そしてその市場の背景は因果玉が鈴なり、巧者筋は戻ったところを売ってやろうと、手ぐすね引いている。(その戻りが低温であれ降霜であれかまわない)―となると、これは一体どうなりますか、だ。

もちろん在庫は充分ある上に、入船で上積みされる。時あたかも不需要期。

値ごろ観を、さっぱりと捨て去ることが第一の要件であろう。

九千五百円の一万三百円(11限)。あるいは新穀の一万円割れ、期近の九千円割れなしとしない。

それは、ジリ貧が続いたあとのガタガタ崩しでつける値段かもしれない。

ケイ線では考えられないような姿(九、十月限の九千三百円)も、付けてしまえばそれがケイ線になるもので、ふーん、と腕を組んで底抜け型のケイ線を眺める時がくるだろう。

戻してくれたら、売るのだがなあ。一様に考えている事である。

これで土用が高温多照ときたとする。世の中、案外そのようなもので、出来んでよい時に出来すぎたりする。中国大陸の天候にしても、これなら豊作だろう。中国も値引きしてくるだろう豊作なら。そうなると、これはこれはの花の山ではなくて、あれまあれまのずっこけ相場だ。

●編集部注

買い難平の素寒貧というが、これは損切り出来る人には通用しない。

尤も、損切り出来る人は難平をしないのだが。

【昭和四七年六月八日小豆十一月限大阪一万一三四〇円・変わらず/東京一万一二六〇円・六〇円高】