昭和の風林史(昭和四七年六月二十九日掲載分)

部落惨落必至 気分一杯戻した

強い材料と要因を食い尽くすと、この小豆また暴落する。売り方針でよい。強気がふえたのも嫌だ。

「山坊に雨夜の客や蚊遣香 青研」

納会後の小豆相場を、どう見るか。

人気面は明らかに硬化した。海員ストが長期化すれば、中国小豆の入荷が止まり、期近の売り玉は踏まざるを得ないから下げようがないという見方。

もっともなことである。

しかし、相場自身が戻したいところに来ていた。その事を考えるべきではなかろうか。

なぜ戻したがったか。

それは売り厭きであり、値段であり、そして日柄であった。この三要素と線型の三川底型。筆者は六月19日の相場を見て、もう弱気を書くのは厭いた、安値は買いだ、相場は戻すだろう―と直感して、その気持ちで原稿を書いてきた。

それから小千丁を戻した。筆者の予想はその通りだった。もっとも考えていた値幅より、やや大幅に戻したきらいはある。

それで、納会を見、受け渡しと、その後の手口を注意し、材料のかみあわせと人気の流れを判断してみるに、この相場は、再び暴落するだろうと確信する。

売り大手山梨系は自店の売りを手仕舞うのと併行して他店でこの戻りを積極的にそして大量に売り直しているように思える。彼はこの相場を決して強気していないはずだ。

西田の目立った買い玉は、急騰で逃げている。なかなか達者な駈け引きで博多支店の川本常務のアドバイスがあるように思う。川本常務は、北浜出身の、昔風の参謀的相場師型である。

大石の板崎系の売り玉は手仕舞いにかかろうとしている。彼はその煎れ投げが綺麗な事で大石吉六氏に育てられた相場師だ。大石氏の応援なくば、悪質札つきセールスぐらいで朽ちていたかもしれないが、今日の大をなす素質は持っていたし、それを育て上げた大石氏も人物を見る目があったといえよう。

つい話が横道にそれてしまって相場のほうがおるすになるのが小生の悪いクセであるが、場面は六月納会で大きく変わったように見えて、本質的なものはなんら不変である。

従って相場はこの後も本気で売ってよいと思うし、戻した分以上に次の下げはきつくなるだろう。

戻すべき材料を、相場は食い尽くした。上昇エネルギーは燃え尽きた。強気がふえたから決然と弱気するのだ。暴落あり。

●編集部注
正論だ。オシレーター的なロジックと言えよう。
 
玄人的なロジックとも言える。兎角、相場の玄人は売りで我慢し、素人は買いで我慢したがる。

【昭和四七年六月二八日小豆十一月限大阪一万〇八〇〇円・二〇円安/東京一万〇八八〇円・五〇円高】