昭和の風林史(昭和四七年六月二十八日掲載分)

さあ売るのだ 暴落含みの相場

売り方にとっては待望の戻り。戻したから暴落可能の相場になった。戻りが大きいほど下げか急。

「麦飯に鬼城の句あり渋団扇 蚋虫」

大幅に利の乗った期近限月の売りを引いて、先に乗り替えて売る。山梨、三晶の手を見ていると、ゴロゴロ丸太棒を転がすような音が聞こえる。

小豆相場は戻したい様子が見えていた。戻すべきをポンド・ショックで出端(ばな)をくじかれた。しかし思い直して27日は高寄りした。納会事情をヒッカケた戻りである。

そこでどうか。売り場になった。この戻りがあって次の下げがきつくなる。
待っていた戻りである。もう二、三百丁、あるいはあるかもしれないという風情。あればなおよろしい。

のこぎりの歯のような赤とブルーで色分けした産地の気温表は、一見、かんばしくないように見えるけれど、積算気温などまったく申し分ない。作柄は六月20日十勝農試調べで小豆は〝やや良〟。

港湾ストが長びこうと、いずれは陸揚げされる輸入小豆である。

作付け面積大幅増を忘れてはいけない。

八月末在庫四十万俵に百五十五万俵収穫ならば十一月限の一万円相場などちゃんちゃらおかしい。

取り組み面、人気面でのアヤ戻しを、出直りと見間違えて強気したら苦の種を背負いこむ。

小豆は絶好の売り場である。各店とも懐ろはベタ買いであるし、少々戻しても逃げられるような買い値ではない。

窓あけて飛ぶような環境でないのに27日は夜放れ高して、人気を強くしたのがよくない結果を生もう。

強気筋(引かされた筋のこと)は先限の半値戻し、一万一千円台乗せを期待しているけれど、さあそう都合よく行くだろうか、気の利いた買い玉を持っていた人たちは、さっさと利食いして、これからの戻りは売り上がっていく。

高値の買い玉を持って引かされているから強気している人達は絵に書いた餅。口をあけて待っている間に相場は相場はズンズン下げていく。

どこかで一度ブチあげなければ駄目なのだ。

灰の汁と書いてアク。この小豆相場は灰汁が抜けていない。

ともかく、売り安心の相場なのだが、大衆は怖くて売りきれない。売れ売れ言っても、どうしても売らない。それでは営業にならないから買いますか?と問えば、大概の客は、すぐに買うそうだ。だからこの相場、再び売り方針。暴落含みだ。

●編集部注
昭和四七年六月二十四日、イギリスがポンドの変動相場制移行を発表。

これを受け日経平均は一カ月分の上げ幅をたった一日で失ってしまう。

【昭和四七年六月二七日小豆十一月限大阪一万〇七八〇円・四二〇円高/東京一万〇七五〇円・三五〇円高】