底が入った!! 買い方愁眉開く
小豆相場は底がはいった。産地の天候は開花期にきて崩れだした。買い方は愁眉を開かん。
「朝顔を見にしののめの人通り 万太郎」
児玉社長の江口商事の階段に姿のよい朝顔がひと鉢、台の上に置かれて花をつけているのが印象的であった。
山本博康氏の田中が、今の場所に移転する前は船場の三品ビルにあって、古いビルだから冷房装置がない。夏になるとデスクとデスクのあいだの通路に幾つも氷柱を立てて、いかにも見た目が涼しい。
昔、東海道線を走っていた特急列車の食堂車は夏になると食卓の上に花氷を飾った。純白のテーブルかけに銀食器が輝き、その花氷がいかにも夏らしさを思わせた。
いまの新幹線緒ビュッフェはまるで養鶏場のレグホンが餌をつついているみたい味気ない。
児玉社長のところのひと鉢に咲いた一輪の淡い色の朝顔を見ていてそのようなことを思った。
小豆相場は底がはいった。
帯広からの情報では、一週間続いている低温で、作柄は決してよくない、いやよくないじゃなく、非常に悪い。そして中間地帯も、言われているほどよくない。
その事が、きっと今週の相場の上に出てくるだろう。
これからが開花期である。今週の天候が特に注意されよう。
納会当日と次の27日とで、相当な買い玉が整理された。
28日はコツンとして、29日(土曜)は久しぶりで相場が反発した。
すでに日柄の面では充分なところにきているし、整理が進んで、しかも値ごろとしては、いかにも下げすぎたように思う。
低温続きという現象がタイミングよく、この現象に絡みあえば、意外な反発も期待出来る。
なにより、底が入ったということが、売り方を動揺させ、買い方に力をつけさせるのである。
底が入ったか、入らないか、そんなことは判らないと言う人がいても決して変ではないが、筆者は完全に底が入ったと思う。
今までの相場を見てくると、四月は25日。五月も25日。六月は22日。そして七月は27日。不思議に月給日ごろが相場の底になっている。普通、月給は25日であるが27日のところもあるだろう。言えることは納会前夜にカチンと叩いた安値は、あと反騰につながるということ。月曜は押すかも知れぬが、もう大丈夫、買い方愁眉を開くところである。
●編集部注
開業当時の新幹線に食堂車はない。80年代、一部の車両についていた。
高級感があって、そこそこ美味いものは食えた。ただ文中の内田百閒の随筆に出てくるような世界とは程遠かった事だろう。
その車両の引退と共に、食堂車も消えた。その後ビュッフェも消えていく。
【昭和四七年七月二九日小豆十二月限大阪九七七〇円・一三〇円高/東京九七九〇円・一九〇高】