出足快調なり 天高く相場高し
十月は出足からなんとなく活気に満ちている。穀取業界は今年ただ一回の二日新ポに期待する。
「脱穀のベルトゆたゆた筑紫なり 宰史」
東穀の中国大豆は第一節三百三十八枚(三限月)出来た。数字合わせの上手な森川直司企画室長なら〝さんざんや〟というかもしれないが、出足は快調である。しかも中国大豆に対するムードは、きわめて高まり、期待するところが多かった。
二日新ポ、大阪の空は衛星中継で見た北京の空のように抜けるように澄んでいる。
小豆は足立農林大臣の札幌談話(下期雑豆輸入割り当ては行なわない)を好感して反発。荒れるといわれる二日新ポ月。なんとなく今月は、うまくいくような感じである。
足立農相は、豆どころの北海道で人気取りもあろうが①小豆は作付け面積の増反と予想外の豊作で相場が暴落している②このため八月に発券した上期雑豆輸入外割り(一万九千㌧分)による輸入を行政指導で引き延ばして行きたい③このため下期の輸入割り当ては行なわない方針。
市場人気は、戻ったところは売りだ―と、軽く見ているが、相場なんて、案外このようなことから底値を脱出するものである。
人々は、小豆の相場は〝無い〟とあきらめている。しかし七千八、九百円どころは、いかに売っても取れない値段になっていた。
ここで、新値三段抜けが買いになり、ナベ底脱出の人気が盛り上がってくれば押したり突いたりしながらも、相場になるだろう。相場なんて動きさえすれば人気が寄るし、人気が寄れば動くのである。
手亡にしても押し目買いで七千五百円あたりを狙う相場になっている。これも、いずれ先に行けば八千円、九千円という市場を湧かす場面を約束している。
とにかく一般経済界は不況脱出。投機市場もスケールを大きくしているという事を忘れてはならない。五年前、十年前の大豊作当時とは環境がガラリと変わっているのだ。
岡地の岡地良彰専務が言っていた。『五千万円や一億円、ちょっとしたお客さんなら気にせず持ってきます。びっくりしたなあも。商品界は、まだまだスケールが大きくなる』と。これを米常の安田稔社長式でいうと『往生こいたわ』という事になる。ほんまに〝びっくりこいたわ〟。
●編集部注
言霊の存在を風林火山がもし認めているのならば、この文章は自分自身へのエールであろう。
言葉一つで状況が変わる程、相場は甘くない。ただ、言葉一つに思いを託したくなる程ここまでの相場は陰惨であった。
当時の相場と同様に、文章自体にも少し前の活気が蘇ってきている。
【昭和四七年十月二日小豆三月限大阪八一六〇円/東京八一九〇円】