昭和の風林史(昭和四七年十月七日掲載分)

安い所売らず 強い場面買わず

強い場面で強気したら駄目。弱い場面で弱気しても駄目。小豆も手亡も当分は逆張りである。

「四五歩にて本犀またも匂ふなり 義子」

米国産ピービーンNo.1規格千二百㌧を積んだ船が四日五大湖を出港、12月5日神戸港に到着するそうだ。この契約は九月中旬に行なわれ、価格はトン当たりFOB二百三十㌦。もとより採算割れであるが取引所相場の売り建て玉によってカバーするだろうという見方。ピービーンズの成約商社は現在のところ、日昌物産一社だけで、取引所相場の低落や供用格差の拡大で、その後の輸入商談は進んでいないという。

定期を売っておいて赤字でもよいからピービーンズを輸入して、これを定期市場に叩きつける。定期が崩れたところで売り建て玉をを利食い。輸入の損失分をカバーする。この場合のピービーンズは叩き道具でしかない。

この逆が手亡の赤字輸出である。定期を大量に買い建てしておいて、少々損でもよいから現物を輸出する。市場人気は輸出を好感して相場が高騰する。すかさず定期を利食いして輸出の損失を埋める。

取引所相場の利用の仕方はいろいろある。うまくいっぱい乗せてしまってその裏をかく。死の商人といわれる兵器産業が、陰謀をめぐらせ戦争の火をつける。戦火が拡大すれば兵器の需要が増大する。死の商人が亡びる時は資本主義経済が滅亡する時である。

それと同じように、商品先物市場で売り崩し、買い煽りが出来ない状態になった時は、取引所機能が止まる時である。

買い煽って他店から売りつなぐ。この場合、買うのは強気しているから買うのではなく、弱気だから買うのである。いうなら相場テクニックである。

どうなんだろう、この手亡相場は。難しく考えないで、七千円乗せから細く長く売っていけばよいという見方も充分に成りたつし、六千五、六百円あたりを待って先々と買っていく手もある。

強気に片寄るところではない。売りの好きな人は売り場を待つ。買い好きは買い場を待つ。

小豆はどうか。小豆はチクチク戻して、ワッときたら反落であろうが相場の大底は確認してきた。

小豆も相場を大きく見ずに押し目買い、戻り売りである。

ズンズンこのまま高くなっていくものでもないし、下げても大崩れする相場でもない。

●編集部注
〝商品先物市場で売り崩し、買い煽りが出来ない状態になった時は、取引所機能が止まる時である〟という箇所にドキリとさせられる。

【昭和四七年十月六日小豆三月限大阪八六六〇円・一〇〇円高/東京九一五〇円・五九〇円高】