昭和の風林史(昭和四七年十月二十六日掲載分)

反発しただけ 悪くなった小豆

相場が高くなれば契約が出来ることぐらい判りきっている事だ。八千二百円の小豆である。

「ものの情濃く薄く芝末枯れぬ 楸邨」

24日夕刻天津小豆トン当たりFOB五百三十七元(99ポンド)の価格提示があり、一ロット二百㌧で二社が四百㌧契約した。そのほかの商社も25日中にそれぞれ契約に踏み切るようで、十社ないし十五社、四千、ないし六千㌧が契約されようと伝えて前日買われた相場は急落した。

五百三十七元は公定レートだと91ポンドになるが円切り上げを見越して99ポンドに換算しているのだそうだ。

高ければ契約が出来ることぐらい判りきっているのに、相場がワッとくると、やはり飛び付く人が多かった。

小豆の線型としては、上の窓を埋めた格好で、こうなると24日の高値を買った玉が重くなる。

八千五百円にあった抵抗も難なくはずれて、八千二百円という水準に落ち込むことであろう。

おりからの新穀の出回り最盛期である。小豆相場を強気するのは、まだまだ早いという事を人々は、あらためて感じるのであった。

一方、手亡のほうはこれは小豆と違って、取り組みそのものもベタに売られている。小豆が下げても需給事情が違うので、手亡相場には影響しない。

手亡は高いところを買わず、押し目を長期方針で強気すれば報われよう。

●編集部注
 この日の紙面の都合もあってか、短くあっさりした記述だが、普段、ロジックが饒舌な分、記事が短いと逆に凄みがでる。

 人事を尽くして天命を待つとまでは言わないが「もう書くだけ書いた」という感も行間に滲む。

 十月上旬の大陽線が目先の陽の極みであり、この記事を書いている時は大陽線からの大陰線。マド埋めも完了し、二十四日の高値は十月の二番天井。トレンドは切り下がりとなってチャネルラインが見える。その下限水準は八千二百円水準で、そこには二つのマドが存在して…。

 ざっとこのように書き足す事は出来るが蛇足だ。野暮である。相場用語の由来の多くが花柳界から来るように、相場も記事も粋でなければならない。

 以前風林火山が指摘していた〝ソーサーボトム〟はここに来てくっきりと浮かび上がっている。もしこの時、テクニカルが大好きな外務員なら、お客さんにどう勧めるだろうと夢想してみる。

 半値押し水準を想定して買い推奨だろうか。

 ソーサーボトムが変容して変則的な逆三尊という見方も出来る。トレンドラインも判りやすい。

 長かった低迷期が間もなく終わろうとしている。

【昭和四七年十月二五日小豆三月限大阪八五六〇円・四二〇円安/東京八五八〇円・四〇〇円安】