昭和の風林史(昭和四七年十一月八日掲載分)

一巡買われて それから反落だ

50万俵棚上げ成功でワッと買っても九千八百円までである。飛び付き買いはしないほうがよい。

「梢より銀杏落葉のさそひ落つ 虚子」

ホクレンの小豆50万俵棚上げ計画と新穀の出回りの遅れを材料にして小豆は硬化した。

市場では棚上げが成功するようなら、一万円近い相場があるかもしれないと、明るい空気である。

棚上げが成功するかどうか、これは、なかなか難しい問題である。仮りに成功したとしても、棚上げした分はいつどこで放出するのか。生産地が北海道だけなら問題はないが、中国、台湾、韓国から輸入できる現在、ホクレンの棚上げ→相場刺激→高騰→輸入量増大という結果にもなりかねない。

棚上げする以上、輸入も制限し、取引所取り引きの供用格差にも手をつけなければなるまい。

そうなると今度は取引所の使命や役割についての疑問も出てくる。

果たして、そういう小豆を上場しておいてよいのか?。不作の時は市場があぶない―で立ち会い停止。供給量が豊富な年は生産者団体が大量棚上げで相場操縦。価格を吊り上げておいて放出という事になれば相場は暴落である。

50万俵の棚上げをホクレンの小豆買い占め行為とみなせば、判りやすいのではないか。

古来、この種の行為は成功しないものである。相場は一時的に買われるかもしれないが、ストックしたものは、そのまま在庫になっていく。金利もかかれば倉敷料も大きい。当然ホクレンは定期市場にヘッジしなければなるまい。

農林省がどの程度まで考えてホクレンの動きを左右するかであろう。時あたかも総選挙の接近。案外選挙資金づくりや、生産者の人気取りかもしれない。

政治家や団体屋は選挙となると常軌を逸するものだ。取引所相場を利用する事ぐらい、何とも思っていないから用心することだ。

それで、この相場、ワッときて、その時の上値は三月限で九千五百円。先限(四月)で九千八百円あたりはケイ線判断から予測出来る地点だ。

それ以上は、輸入品がヘッジされようし、北海道の生産者も売ってくるのだろう。八千五百円以下の売り玉が踏んできて、一万円必至の人気になって、九千七、八百円を飛びつくようなら絶好の売り場になろう。

飛び付き買いは危険だ。

●編集部注
小説「赤いダイヤ」を読むと上記の場面と似たような展開が出てくる。

現実の業界では、政治家の取り込みに失敗し、生産業者の取り込みに失敗していると思う。

一般投資家まで失えば四面楚歌である。虞や、虞や、汝を奈何せん…。

【昭和四七年十一月七日小豆四月限大阪九三六〇円・一一〇円高・東京九三九〇円・一九〇円高】