昭和の風林史(昭和四七年十一月十三日掲載分)

今が売りどき 高値が品を呼ぶ

値が高くなれば品物が出回ってくるのは当然。月中にはかなりの小豆が消費地に集まるだろう。

なんとも底堅い成り行きである。

出盛り最盛期と年間最大の需要期とが、カチあっていずれに軍配があがるかその勢力を競っている形。

今のところホクレンによる三十万俵タナ上げ実施計画の発表により、目先筋や小口のイレと、下値乏しいと見た実需筋の買い気が先行している。

さて、ホクレンが豆作農家の〝豊作貧乏〟救済のため過剰分を一応カン詰めにすることは適切なことである。だが、その費用約二億七千四百万円まで国と道とに負担してもらうよう要請するというのはいささか腑におちかねるところである。

ホクレンや産地農家も、選挙前の今なら票欲しさから代議士先生方も極力応援してくれようという予想もあっての計画だろう。

国や道に費用の負担を要請する根拠は、国の米作減反方針によって止むをえず豆作に転作したところ結果は大豊作で安くなった。このためのタナ上げであるから費用の負担は当然ということだ。

しかし、転作は豆だけが可能だったわけではない。馬鈴薯にも、ビートにも転作できたはず。それが小豆に集中したのは去年の値に惚れたからにほかならぬ。

気象台の長期予報はかなり悪い予想であった。道も冷害に弱い豆類より他のものへの転作を指導していた。

それだのに小豆への転作が多かった。

皮肉にも天候は予想を裏切って良好そのもの。去年の三倍の小豆がとれ、そして値段は去年の今ごろの半値以下になったとしても、これは欲の間違い、思惑違いである。それの尻ぬぐいの費用を国や道に持てというのはいささか的はずれではなかろうか。

白菜がとれすぎて運賃もでないから畑に棄てられてあるとか、リンゴが豊作で農家が泣いているとかいうことがよくある。しかし、国や地方団体が資金の融資はしても援助の手をさしのべたとの話は聞かない。

今度のこの要請が通るとなると、次々と同様なケースが起きてこよう。

さて底堅い今の小豆相場だが、値が出回り遅れの品物を呼ぶのは必至である。来週の中ごろまでこの強さが続くかどうか疑問だ。やはり高値、高値を売り上がること。

●編集部注
 時代は変わる。

 平成の現在、日本の農業はTPPの脅威に晒され、JA全中も3~5年でなくし、その下のJA全農を株式会社化しようという動きが出ている。

【昭和四七年十一月十一日小豆四月限大阪九二九〇円・六〇円高/東京九二六〇円・五〇円安】