昭和の風林史(昭和四七年十一月二十四日掲載分)

上げ相場終了 急反落の兆あり

手亡の伸び切ったところがおしまいだ。小豆の買い大手筋巧妙な利食いに入る。後は強人気だけ。

「初霜や吉田の里の葱畑 虚子」

京都駅前烏丸七条の交叉点を東に折れると、そこに穀物専業の京丹穀物がある。店頭は熱気に満ち、お客さんがいっぱいである。久しぶりの急騰相場で活気づき、昨年来の下げ相場と違って、やはり上げ相場の方が大衆投機家の人気を集める。

同社の田中育造常務に聞いてみた。「一万円相場になったら、産地からの集中つなぎ売りを浴びると思っていたがさっぱり売ってこない。現物はこのところよく売れてはいるが、大手業者は入用買いしかしないので、いまひとつ思わしくない。産地から現物は直送されてくるが、定期市場は素通りで、ホクレンあたりの紙袋入りが目立っている。また旭川地区では検査場がなく、この調整遅れも期近高の原因となっている。あまりにも出来過ぎて出荷調整がはかどらないらしい。小豆はここまでくると多少無理買いのような気もするが、それよりこれから手亡に買い妙味がある」と。

この道六十年、相場一本でメシを食ってきたというお客さんのA氏は「こんな無茶な小豆の暴騰相場は買えぬ。百八十万俵の大豊作で、強気のいう一万二千円相場は考えられず、不安たらたらの上げ相場には手を出さぬ。ワシは売り場を待っている。伸びるだけ伸ばせば、この裏目は急で値幅も大きい。崩れ出したらストップ安の連発だ」。

案外、このような意見が玄人筋に共通しているかもしれない。ケイ線観測筋は、この小豆、買い基調に変化はないが、軒並みに利食い線だといっている。このあとの下げが、押し目となるが、下げ相場につながるかが問題であると。

全限イレも出たし、高値更新で手の早い強気筋の利食いもすんだ。後は転換のクイックが必要とされるところへきたとみている。

手亡相場は、小豆との比較観からいま一段高が見込まれる。小豆の当限を買いまくって逆ザヤ相場をつけ、短期決戦を狙った買い方大手筋は、先物を人気づけて順ザヤとなし、今度は手亡に追随高を示現させれば、今回の上げ相場のパターンもひと先ず終了。

それでなくても手亡買いは大勢張りである。小豆とのサヤ開き千丁までは買ってみたい。それまで小豆が高値維持できればの話。

●編集部注
 「こんな無茶なドル/円の暴騰相場は買えぬ」

 平成二十六年十一月中旬にそう言っている人が、必ずいる筈。世々を経ても不変の相場心理なり。

 逡巡するうち、旗色は更に悪化。悪循環である。

【昭和四七年十一月二二日小豆四月限大阪一万〇一一〇円・一〇円高/東京一万〇〇九〇円・二〇円安】