昭和の風林史(昭和四七年十二月一日掲載分)

売り上がりで 辛抱のしどころ

大衆パワーが商品取り引き相場をリードしている。しかし小豆は売って果報を待つ場面。

きょうから六カ月さきの来年五月限がたつ。

五月といえば既に天候相場の限月。各店の黒板にも産地・北海道の朝、昼の天気と温度がのるころだ。

この新しい限月は、おそらく順ザヤ、高く始まろうという見通しが強いため、それにあわすように昨日も反発、続伸して各市場では先限二~三本がまた一万円台まで戻している。

とにかくインフレヘッジによる大衆筋の買い気は強い。このことは株価が夜が明ければ高くなるのをみても判るところだが、商品相場でもこの二~三日ほとんどのものが高い。

たとえば二十八日は綿糸、二十九日は人絹糸を除いてその他が大体に値上がりしている。この勢いがまだ新しいだけになかなか侮れないものがある。

穀物相場でも商社、玄人筋の売りと大衆の買い傾向が一層顕著となっているが、目先的には大衆パワーが優勢のようにも思える。

しかし清算取り引きが主体である商品取り引きでは株式とちがって買ったものは、ほぼ一〇〇%まで売らねばならない。いまの上伸の原動力となっている大衆買いが、近い将来売りとなることは必然である。

上がれば買いたくなるし、下がれば売りたくなるのが人情。だから相場で儲からないと悟りながらも相場が戻りだすと追随して買いたくなる。そしてまたそれが大衆買いを誘発する。

三十万俵タナ上げだとか、発券停止だとか、出回り遅れだとか言っていても現実に大量の現物があることは厳粛な事実。それを無視して買い上げたあとのトガメは当然深くなる。

意表をついた反発は、また思いがけない急落にもつながるだろう。

五日の在庫発表で、もしワッと買われたところが年内のピークと考えられる。戻り売り方針である。

この点、事情が根本的に違うのが手亡だ。九月一日現在の収穫予想五十三万俵から長雨被害で三十万俵台まで減収になっているともいわれる。

ピービーンズという代替品はあるにしても、六限月制となった現在、定期用の種玉にも事欠く恐れがある。

仕手の力で九千円までかつぎあげることも不可能ではない。手亡は押し目買いを続けたい。

●編集部注
我慢して取れた相場ほど、気持ちが良いのだ。

【昭和四七年十一月三十日小豆四月限大阪一万〇一四〇円・四五〇円高/一万〇一九〇円・四一〇円高】