昭和の風林史(昭和四七年十二月十一日掲載分)

目先反発場面 だが上伸に限界

今週は下げ幅の半値ないし三分の二を戻そう。しかし一万円あたりの壁は厳然としている。

「柚子匂ふ湯豆腐軽くすくいけり 恒明」

東繊取の取引員協会長の(武田商事)武田社長は俳句の雑誌と歳時記と俳句に関する新聞のスクラップの中に鎮座ましまし、その社長室はさながら俳諧文庫である。そして俳句修学はデッサンにデッサンを重ね苦吟すること相場の呻吟など足もとにも及ばない。毎週土曜日は、神田の古本屋を回り、俳句に関する文献を調べる。皆吉爽雨の『雪解』同人として活躍、『馬酔木』にも加わる。大納会砂場のそばをふるまわれ(恒明)。

私は川柳の出だから、どうしても川柳調の匂いが出てきて困る―と。川柳なら江口商事の児玉社長が知られている。児玉さんが川柳で名をなしている事を武田さんは知らなかった。

武田社長は伊藤疇坪(忠兵衛)氏の句集〝芦の芽〟を下さった。筆者は『四季日本橋』を、おねだりに行ったのである。

師走のひと時、武田商事の社長室で、楽しい思いをさせてもらった。

小豆相場のほうは期近の九千円割れには抵抗がある。

週末の引け味では、今週は下げ幅の半値ないし三分の二を戻しそうだ。

そして、また売られよう。

産地情報によれば消費地向け小豆の出荷は近年みられないほどのハイペースで、貨車、コンテナ中心に年内六十万俵を予想している。

道産物期初在荷七千俵。

年内入荷五十七万俵。

輸入物初在荷二十三万俵。年内入荷十万俵。

道産小豆と輸入小豆の合計の(十月~十二月)期初在荷二十三万七千俵。

年内入荷六十七万俵。

年内供給九十万七千俵。

年内消費を六十二万七千俵と見て消費地越年在荷は二十八万俵の予想となる。

値段が安いために、予想外の消費量であった。

それが定期相場に反映して期近限月で二千五百円幅の反騰となった。

今週は、週末の地合いから判断して買われる場面である。

しかし、不需要期に向う。輸入物の入荷などを無視するわけにはいかず、仮に買い方が積極的に出ようとも当面、一万円どころは壁である。湯豆腐軽くすくいけりという感じのところか。

●編集部注
湯豆腐やいのちのはてのうすあかり(万太郎)。

単純な食べ物ほど複雑な存在はない。軽く見ると意外に重かったりする。

待ちに待った下げ相場がやってきた。その諧謔表現にウキウキ感がある。

九千円割れを目の前にした時、風林火山は何を語るのだろう。

【昭和四七年十二月九日小豆五月限大阪九七五〇円・一〇〇円高/九七一〇円・一二〇円高】