昭和の風林史(昭和四七年十二月十二日掲載分)

売り場を待つ 年内ジリ貧の型

戻したところは売り場になる。大衆筋は買う気が旺盛だが、高値取り組みの影響が出よう。

「笹鳴や水のゆふぐれおのづから 草城」

穏やかに暮れて行きそうな風情である。きょう12日は東京ゴム取引所の開所20周年記念。午後一時半からパレスホテルで祝賀会が行なわれる。ゴム相場の基調が斜め斜線肩上がりの時だけにゴム取関係者の気分が明るい。

今年は幾つかの取引所が開所20周年を迎えた。20年にして、ようやく商品業界のビジョンが定まろうとしている。

業界は総じて落ち着き、前途の見通しも非常に明るい。業界を回って最近つくづく感じることは、業界全体が自信を取り戻し、地位の向上に専念していることである。

時勢を眺めていると、来年は、わが商品業界にとって予想もしない発展、成長が約束されているように思えてならない。商品相場のブーム。真の黄金時代がきそうである。

株式、土地、宝石、絵画、ゴルフの会員権、そういうものは、だんだん庶民の手からとどかないところに位置しよう。そうかといって競馬などは、単にギャンブルであり、精神面を充実させてくれるものではない。となれば、五、七万円から四、五十万円という手軽な資金で時に倍にも三倍にもメンタルとテクニックによっては、ふやすことが可能な商品相場に関心が集まるであろうことは予測できる。

街の書店に十なん年前のベストセラー〝赤いダイヤ〟が再販発行され、版を重ねているのを見ても、よいきざしと感じるのである。

さて、小豆相場は大石の手が安値を支えるかの如き手口のみ目立つ。大衆筋は年が明けてからの仕手の活躍に期待をかけ、全般に、この小豆相場を買ってくる。

うまくいけば年内利食い出来るかもしれず、たとい利食い出来ずとも越年させれば新春高だ―という穏やかな考えの強気が多い。

その考え方に水をさす気は毛頭ないが、目先的には戻したところは、売りの方が型が早く決まるのではなかろうか。

不需要期という厚い壁がある。そして高値を掴んだ気になる取り組み。

期近の八千五百円。期先の九千円。あり得る値段に思える。

方針としては戻り売り。その姿はジリ安と見る。

●編集部注
 業界の若い世代に「その昔、商品相場が舞台の小説が大層売れて、映画やTVドラマにもなったんだよ」と言って、信じてもらえるだろうか。 

 「赤いダイヤ」は今読んでも面白い。しかし、時は残酷でこの原作者の小説は今殆ど読む事が出来ない。売れないからだ。

 今回の文章は、色々と時の残酷さを感じる。

【昭和四七年十二月十一日小豆五月限大阪九六六〇円・九〇円安/東京九六一〇円・一〇〇円安】