昭和の風林史(昭和四八年一月二十二日掲載分)

今から強気す 新値抜けが急所

新値抜けは残念ながら売り方の敗北が決定する瞬間である。時勢、時の流れには勝てない。

「夕月に有りしとも見ゆ雪女 青々」

いろいろと考えてみた。こんな事があるのだろうか。いや現実にそうなっているのだから、あるのである。

それではなぜだろう。考え方がどこかでズレていたのだろうか。相場は相場に聞けという。その限りでは一万二千円を抜いてしまうと、三千二百円高の千百円押し、三分の一押しで、これを軽く反発してくるようでは、倍返しの一万三千円。あり得る線型である。

いまのところは逆張りかもしれない。しかし、これが長期戦に持ち込まれて、天災期につながれては売り方、手も足も出ない。

大石吉六氏は言う。お金の持って行き場がない株はここまできてしまって手が出しにくいし土地は今からでは、とても高すぎる。そういう人たちが小豆に資金をつぎ込んでいる、現物を受けてどうするという生糸の仕手のようなことはしないが、時勢というものを、つくづく感じます―と。

買い方仕手がなんだい、豊作ではないか―という。そもそもの考え方が時代の流れを見る目をくもらせたのかもしれない。そして意地がつく。相場の意地は命取りになる。

しかし見ている限り腹だたしいが、ことごとく環境は買い方に味方しているように思う。
もとより充分に相場テクニックが駆使されていることを感じる。相場の奥義を知っている。無理をしていない。自然流というか利食いするところでは利食いし、抵抗するところで、ちゃんと抵抗して、しかもそれがツボにはまっているのだから腹を立てるよりは御立派だ―と舌を巻く。

人間、順風にめぐまれたら、あれよあれよという間に力が出来、その力がまた次の力を生む。

恐ろしい相場だと思う週末のS高先限一万二千円は17日の高値顔合わせ。あたかも金曜日の大引けを千三百円で止めたのは、S高一発七百丁で一万二千円を次の日につけるため充分に計算されたもののようにも見える。

二千円を抜ければケイ線は倍返し一万三千円をつけることになる。
週明け、値をを冷やして三千五百円安という押し目があれば、土曜日に飛んだ空間窓を埋めることになり理想の格好だ。

●編集部注

どうやら、いつもの風林火山に戻ったようだ。

元々自著で「腹立ち商いすべからず」という相場格言を紹介する人である。君子豹変すである。

【昭和四八年一月二十日小豆六月限大阪一万二〇〇〇円・七〇〇円高/東京一万二〇〇〇円・七〇〇円高】