昭和の風林史(昭和四八年二月六日掲載分)

大勢買い一貫 大事は糊塗せず

目先の事を考えなければ買いの一本道の小豆だ。安ければ安いで買う。キメの荒い方針でよい。

「春浅き雨にぬれゐし京菜かな 暮雲」

天下をもって天下を見る。

相場をもって相場を見る。

相場は相場に聞け。

相場を相場に聞くならば遠い安値に売り玉ある人はこの相場、日柄の面で限界に来ている。下げる時は気崩れであると判断しようし、買い玉持って強気している人なら、なあに若い相場だ、下げても逆襲斬り返しの鮮やかなこと。一万五千円目標―と言う。

相場を相場に聞く時は無心でなければならないが、なかなかそうは、いかないもの。

どうだろう。大勢的には一万五千円であり、天候相場に〝もつれ〟込めば一万七千円の絵も書ける。大豆が一俵一万五千円じゃないか―ということになる。(その大豆も崩れだしたら早いだろうが)。

筆者は、この小豆、大勢的には、どこを買っても良いと思う。そして三百円安、五百円安、時にS安という下げ場面を待って、さらに仕込む。下げは怖くない。

しかし、水準が高いだけに一本調子の上昇は考えないほうがよい。

巧者なら湧いて値が伸びきったところを軽く売っても、充分に泳げる。騰げ相場を売って儲ける事も出来るし、下げ相場を買って取る事も、巧者なら可能だ。

三軍の災いは狐疑より生ず(呉子)と言う。大事は糊塗せず。

今の相場は、ああだ、こうだと細かいことは考えない。信念。大局の方針を建てたら一本道。

疑わば、すなわちするなかれ。した以上は疑うなかれ―である。

従って、暴落よし。急落また楽しからずや。時にS安を欲し、買い場を求めん。道は六百八十里、長門の浦を船出して、はやふたとせをふるさとの山を遥かに眺むれば―である。

手亡はどうか。

手亡も押し目買いである。先般付けた高値二ツを買い切れば、ふっ飛んでしまう相場である。

この相場もキメ荒く、買いの一本道。安ければまた買う。そしてさらに下げれば食いついて離れず買っていく。相場の資金と凧の糸は出しきるな。手もとにゆとりをもって強気する。

ともかく、来月は需要期である。安ければ買いたい人ばかりの小豆である。安心買いも可なり。

●編集部注
風林節全開である。

「筆が乗る」というのは、こういう文章の事。
 
こういう時は相場に自信があるか、不安な要因を筆の勢いで打ち消しているかのどちらかだ。

【昭和四八年二月五日小豆七月限大阪一万三四〇〇円・一六〇円高/東京一万三四三〇円・二三〇円高】